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静岡

若者の投票 文化芸大生と記者が語り合い

2019年7月14日

◆「投票所が山の上に」「政策が伝わってこない」

参院選について話し合う学生ら=浜松市東区の中日新聞東海本社で

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 若者は投票にいかない−。恐らく、今の高齢者が若者のころから言われ続けてきたことだろう。今回の参院選でも若者の選挙離れが懸念されているが、では、どうすればいいのか。静岡文化芸術大(浜松市中区)の学生と記者が語り合う「新聞カフェ」選挙スペシャルとして、いまだ「若者の一員」である記者が日ごろ、頭によぎる考えをぶつけてみた。「別に行かなくてもいいんじゃない?」

 −今回の選挙、投票に行きますか。

 「投票所が山の上にある」「何かのついでだったら行くかも」。一同、あまり気は進まないらしい。

 −じゃあ、もしも『徴兵制の導入』を決める選挙だったら。

 「ああ、だったら行くかも」と五人。うーん、「政治に興味がない」というより、「興味ある政治がない」ということか。

 「実際、候補者が何をするのかってあんまり伝わってこない」「ふだんツイッターで流れてくるおかしい政策とか、それは違うって思うけど投票に結びつかない」と織田鈴佳さん(20)。

 鈴木弥子さん(20)は「(今の政治に)不満はあんまり感じていない。私たちも年をとって、いろんなことが分かるようになったら行くんじゃないかな。今投票に行く層だって、若いころは投票に行ってなかったのでは」と疑問を口にした。

 確かにそう。大人になればしがらみも増える。自身の考えというより、属する団体や組織、有名人だから、というだけで投票する大人だって多い。

 「そういう(ちゃんと考えずに投票する)のはおかしいと思う」。これも異口同音。

 −じゃあもう、選挙に行かなくてもいいよ。何も考えずに投票して、率だけアップさせても仕方がないし。投票したいって思った時にすればいいんじゃないの。

 「だって、みんな選挙に行けって言うんだもん。行かないのは罪悪感がある」。野田祐理香さん(20)が戸惑うようにぽつり。「みんな行かなくなったら、やばいと思う」と鈴木さん。

 同大文化政策学部の加藤裕治教授(49)は「戦後、日本が豊かで平和な社会になったことの表れでは」と議論を聞いて総括した。一方で、「投票権を得るまでに、日常生活の中で政治について考える機会があまりないのかもしれない。自分たちで身の回りのルールを決めるといった、政治の実体験が必要ではないか」と提言した。

(鎌倉優太、27歳)

◆取材を終えて 「家族の誘いあれば」に期待

 1時間20分ほど、学生らと議論した。「なぜ、投票に行かないのか」。よく聞いたのは「選挙や政治に興味がない」という声。興味ないもののために、わざわざ時間をかけて投票所へ行くのは面倒と思っている。

 候補者はインターネットでの広報に力を入れる。質問に答えると、政党や候補者との一致度合いが表示される「相性診断」ができるサイトもある。昔に比べたら参考情報は多いはずだが、そもそも興味のない若者は自分で情報を収集しないようだ。

 一つ光明が見えたと感じたのは、「親や祖父母が行こうと言えば行くかも」という声だった。親が行かなければ、子どもが投票に行くはずがない。家族の投票行動を若者は見ている。

◆20代投票率 20〜40%台

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 総務省によると、一九八九年以降の参院選の投票率を世代別で見ると、最も高い六十代が60〜70%台で推移しているのに対し、二十代は最も低く、20〜40%台で推移。前回の二〇一六年の参院選は35・6%で、全体の54・7%を大きく下回っている。

 若者の投票率の低さは日本だけではなく、一八年の米中間選挙前では、高齢者が「気候変動? それはあなたたちの問題。私たちはもう死ぬもの」などと若者を挑発し、逆説的に投票を促す動画が話題に。参院選を前に今月、日本でもネット上で注目を集めた。

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