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静岡

小学生の預け先拡充を 待機学童のニーズ増加

2019年7月7日

◆働く保護者、切れ目ない支援願う

放課後児童クラブで、帰りのあいさつをする児童=浜松市内で

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 保育所には入れたのに、子どもが小学校に上がると、預け先に困ってしまう。「待機児童問題」は保育所だけではなく、小学生の「放課後児童クラブ」にもある。参院選で各党が子育て支援の施策を掲げる中、子育てと仕事の両立に悩む親は、切れ目のない支援を求める。

 浜松市内の放課後児童クラブで、学校の授業を終えた一〜三年生が宿題やブロック遊びをしていた。「お待たせー」。仕事を終えた保護者が姿を現すと、うれしそうに駆け寄った。

 一年の息子を迎えに来た母親(43)には、三年の娘もいるがクラブに入れず「待機学童」になってしまった。本来は全学年対象だが定員を超える応募に、学年や家族構成などから優先度が下がったからだ。両親に世話をお願いするが、一人で留守番することも多く「低学年はまだ自分で命を守れない。保育園児の延長と考えてほしい」と求める。「培ってきたキャリアを閉ざしたくない」と打ち込む仕事では現状、平日の残業分を休日にこなすしかない。

 クラブは原則、小学校単位で整備され、自治体などが運営している。静岡県内でクラブに入れない待機学童は都市部で目立ち、二〇一八年五月現在で八百十五人。うち浜松市が三百五十五人を占める。「ニーズが増えており、対応が追いつかない状態」と市の担当者。子どもの世話をする支援員の確保も課題という。

 「保育園落ちた日本死ね」といった匿名ブログから保育所の待機児童問題が社会的に注目を集め、保育所の待機児童解消が加速した。県内でも保育所の整備が進み、待機児童数は一五年四月の七百八十人から一八年四月には三百二十五人に減った。一方で働き続ける母親が増えている分、小学生の受け皿となるクラブの枠が足りなくなっている。十月から始まる幼児教育・保育の無償化で、さらにニーズが増すという懸念もある。

 クラブを巡っては、保育所に比べ、預けられる時間が短いと悩む保護者も多い。浜松市のある母親は、子どもの引き取り時間に間に合わせるため、働き方を正社員からパートに切り替えたという。「今年から三十分延びて午後六時半になったから多少余裕ができたけど、保育所なら延長保育がある」と嘆く。児童の預け先がなく、フルタイムの仕事ができなくなる問題は「小一の壁」とも呼ばれている。

 一八年の国の調査では、十八歳未満の子どもがいる世帯で、母親が就労している割合は72・2%。五年前に比べて9ポイント増えている。国は「女性活躍」の旗印を掲げている。三年の娘が待機学童になってしまった母親は、女性が仕事と子育てに追われる現状を踏まえてこう願う。「性別による役割分担を取っ払って子育てしあわないと疲弊してしまう。子どもが安全に成長できる社会になってほしい」

 <放課後児童クラブ> 小学校の授業後、保護者が仕事で子どもの面倒が見られない場合などの預け先として、自治体や地域の団体が運営する。小学校の空き教室のほか、自治会館、協働センター、民間の空きビルなどに設置。都道府県が認定する「支援員」が世話をする。

(飯田樹与)

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