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静岡

託す未来見極める 安倍一強、おごり批判

2019年7月5日

参院選が公示され、候補者(手前)の演説を聴く有権者ら=4日、掛川市で

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 今回の参院選で、数多くの争点の中、安倍晋三首相が真っ先に掲げるのが「政治の安定」だ。六年半に及び「安倍一強政治」とも呼ばれる長期政権は是か非か。公示日の四日、県内各地で有権者に聞いてみた。

 雨上がりの浜松市役所前。まだ湿った掲示板で候補者たちが笑っている。

 「いつも通り与党が勝つと思う」。庁舎から出てきた主婦袴田久美子さん(39)=中区=がポスターに目を向けて言った。この選挙でも「一強」は揺るがないと予想し「改憲の議論でも何でもやりたいようにやっているのは良くない。野党の発言力が強くなるように一票を投じる」と話した。

 「安倍一強」のおごりや緩みを指摘する同様の声は少なくない。

 選挙カーが走らず、まだ舌戦の気配の感じられないJR清水駅近く。会社員渡辺実存(つねあり)さん(66)=焼津市=は「首相は、森友・加計問題などで誠意もなく逃げている。外国訪問が多いわりに外交でも成功していない」と厳しい。

 「子や孫の世代のためにも、ぜひ安倍政権を終わらせてほしい」と選挙カーに乗った野党候補にエールを送っていた静岡市駿河区の主婦高畠好江さん(90)。つえを突き、歩いて静岡駅前の演説を聞きに来た。同市葵区の商店街で野党候補の演説に耳を傾けた杉山昌子さん(79)=駿河区=は年金問題に関し「(金融庁の)報告書を受け取らなければ、年金の問題が解決するわけではない。庶民目線の政治をして」と政権の姿勢を批判した。

 一方、昼にJR浜松駅前であった与党候補の出陣式では、候補者が「野党に転落した時代、自分たち以上に国民が絶望のふちに立った」と声を張り上げ、聴衆が沸き立った。その一人、内田浩子さん(73)=浜松市南区=は「政権が長い分、特に外交でリーダーシップを発揮している。野党は、与党の揚げ足を取っている」と語る。

 葵区で買い物途中だった主婦中村もえさん(39)は「他党が頼りないので消去法で選ばざるを得ない」と言い、野党の「多弱」ぶりを嘆いた。夜になり、帰途に就く人でにぎわうJR浜松駅前で野党候補がマイクを握る中、靴磨きをしていた中区の山口智央さん(24)は大手自動車会社に勤めていた経験から「アベノミクスのおかげで円安に動き、ボーナスなどで恩恵を受けた」と話す。駿河区の会社員田島稔之さん(45)は「(野党ではなく)自民党の中でリーダーシップのある政治家が出てきてほしい」と期待した。

 浜松市中区の静岡大浜松キャンパス近くでは、選挙ポスターが張られた掲示板の前を学生たちが行き交っていた。素通りした工学部三年の平野和弥さん(20)=中区=は「消費税増税は気になる。奨学金を借りているので、支出が増えると生活は苦しい」と話すが、「悪いイメージがないから安倍さんのままでいい」。ただ、この選挙に興味が持てず、今のところ投票には行かないつもりだ。

(参院選取材班)

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