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静岡

立候補予定者 態勢整え決戦へ

2019年6月27日

参院本会議を終えて議場を出る議員=26日午前11時57分、国会で

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 参院選の日程は七月四日公示、二十一日投開票に決まり、選挙戦は事実上スタートした。静岡選挙区(改選数二)に立候補を表明している自民、立憲民主、国民民主、共産四党の立候補予定者たちも選挙モードに突入した。各地に事務所を構えるなど、態勢は整いつつあり、自らや自党の主張、政策を訴える。

 自民現職の牧野京夫さん(60)は国会閉会後も都内で国土交通副大臣として公務をこなした。記者団に「国際情勢が緊張する中、安定した対応ができる政党はどこなのか、見極める選挙」と位置づけた。

 第一次安倍政権が大敗し、二〇〇九年の政権交代の足がかりとなった〇七年参院選を念頭に「政権選択とまではいかないまでも、政権の行く末を大きく左右する選挙だ」と強調した。

 事務所は東、中、西部の三カ所に構える。自民の友好団体を中心に既に百五十以上の組織から推薦を受けている。

 国民現職の榛葉賀津也さん(52)は党本部であった両院議員総会などに出席後、地元入り。主要争点にアベノミクスの是非と金融庁報告書問題を挙げ、「百年安心と言った年金が自己責任で二千万円を用意しろというのは庶民の政治からかけ離れている」と語った。

 選挙戦は「国民の暮らしを守る」ことを第一に訴える。

 県内七カ所に事務所を構えた。投開票日までに千カ所での街頭演説を目標とし、十連休明けから「六百カ所くらい回った」という。連合静岡から推薦を受けている。

 立民新人の徳川家広さん(54)は午前中に県庁で記者団の取材に応じた後、静岡市内の支援者を回った。

 参院選の争点に「脱原発」「リニア」「アベノミクスの是非」を挙げる。五月下旬の出馬表明後、各地で街頭演説を重ねており、県とJR東海の協議が続くリニア中央新幹線南アルプストンネル(静岡市葵区)工事に触れることも多い。

 「静岡県が静岡の自然に対して持っている権利を、JR東海が無視している。県民の気持ちが最優先されるべきだ」と訴えた。

 民主党の衆院議員を四期務めた牧野聖修さん(74)や地方議員、市民団体の支援を受ける。

 共産新人の鈴木千佳さん(48)は地元の川根本町で、両親や支持者とともに遊説した。「野党が市民と共闘することで議席を伸ばし、有利な条件で衆院解散に追い込むための選挙」と力を込める。

 最低賃金の引き上げや大学・専門学校などの学費半額化、年金のマクロ経済スライド制廃止による「減らない年金」などを訴える。

 静岡選挙区には、諸派新人の畑山浩一さん(49)も出馬を表明している。

◆県内有権者 「消費増税に不安」「年金、打開策を」

 参院選の最大の争点について、安倍晋三首相は二十六日の会見で、旧民主党政権を引き合いに「安定した政治のもとで改革を前に進めるのか、逆戻りするかだ」と訴え、政権の安定ぶりを強調した。一方で「安倍一強」の長期政権には弊害も指摘されている。静岡県内の有権者に政権の評価や、一票への思いを聞いた。

 「就任当時のアベノミクスや外交などでは一定の評価をしているが、庶民の生活が楽になったとは思えない」。会社員川島俊輔さん(47)=磐田市=はそう実感を語る。関心を寄せるのは停滞し始めた景気の行方や、金融庁の報告書が火を付けた年金を巡る問題だ。「給料は上がらない。消費税が上がったら、さらにひどくなる気がする。教育費や老後の蓄えも考えなくてはならず、正直不安」

 主婦の中野昭子さん(64)=浜松市東区=は、与野党の応酬が繰り広げられるはずの予算委員会が四月以降、一回も開かれなかったことが不満だ。政権には「おごり」が透けて見えるといい「野党との議論の場をしっかりつくってほしい」と注文。「年金をこれからどうするのか具体的な打開策を訴える党に投票したい」と話す。

 北朝鮮による拉致問題を挙げ「安倍首相の公約が実現したと実感することは少ない」としたのは会社員の稲葉彰子さん(35)=沼津市。「国民から取ればいいと考えているみたいで不満」と消費税増税にも目を向ける。

 経済や社会保障の施策に注目する団体職員の井川宗興(むねおき)さん(31)=湖西市=は「景気が良い期間が長い」と政権を評価した。静岡大工学部四年の土屋尚輝さん(22)=浜松市中区=も「消費者の動向分析につながるキャッシュレス化を進めるなど、今の政府はIT分野に前向き」と好意的だ。高齢者雇用にも関心があり「生産年齢人口を増やし、年金以外の収入を得られるようにするためにも、お年寄りが長く働ける環境を整えてもらいたい」と語った。

 参院選について、日詰一幸・静岡大人文社会科学部教授は「衆議院の『政権選択』の選挙とは違うが、有権者が政権への評価を表明する機会」と説明。安倍首相が何度も、旧民主党を比較対象にしたことは「『野党は政治を不安定にさせるものだ』という主張をシンボリックに伝えようという戦略」と分析し、有権者の判断材料を用意するためにも「野党側は明確な対立構図をつくる必要がある」と指摘した。

(参院選取材班)

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