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静岡

「ミスター年金」長妻氏に聞く

2019年6月22日

◆報告書拒否 不安に拍車

年金制度などについて話す立憲民主党の長妻昭代表代行=東京・永田町の衆院第2議員会館で

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 参院選の投開票日と見込まれる七月二十一日まで、一カ月を切った。老後に夫婦で二千万円の蓄えが必要とする金融庁の審議会の報告書に端を発した年金問題は、選挙での争点化を狙う野党と、避けたい与党との攻防が続く。かつて「消えた年金」問題を追及し、「ミスター年金」と呼ばれた立憲民主党の長妻昭代表代行は本紙のインタビューで、暮らしに直結した年金の重要性を強調し「参院選で信を問うべきだ」と訴えた。

 誰が支払ったか分からない年金保険料の記録が約五千万件あるという問題が発覚したのは、二〇〇七年だった。自民は同年の参院選で大敗。第一次安倍政権の退陣につながった。

 金融庁の報告書を巡って国民の年金への不安が再び噴出する中、長妻氏が疑問視するのは報告書の受け取り拒否。麻生太郎金融担当相は「不安や誤解を与えた。政府の政策スタンスとも違う」と釈明したが、「追加報告書を出せばいい話。なきものにしたことで不安に拍車をかけた」と指摘する。

 老後に必要な二千万円の試算自体は「政府もかねて答弁している家計調査で、(毎月五万円の)赤字は事実」と説明。年金の受給者約三千六百万人のうち半数近くが、平均で月十万円以下の受給額にもかかわらず、報告書は改善策を示さずに投資を促しているとして「老後は自己責任でいけ、と言っている」と批判した。

 年金問題は、将来の国の財政や経済も左右するという。生活保護の受給世帯のうち、高齢者世帯は全体の半数以上を占める。「年金の脆弱(ぜいじゃく)性をほったらかすと、生活保護受給が増え、財政が逼迫(ひっぱく)して後戻りができなくなる。老後の安心がないと消費が伸びず、経済にもマイナス」

 十九日の党首討論で野党側は、年金が少ない人でも医療や介護を受けやすくするための制度の導入や、物価や賃金の伸びより年金の伸びを抑える「マクロ経済スライド」の廃止を提案。安倍晋三首相は、年金制度の安定性を前面に押し出し、議論は深まらなかった。

 長妻氏は「政府与党は『百年安心』が崩れたら票が減ると思っているが、そのスローガンが制度改善の障害。年金問題を含む生活の底上げは参院選の大きなテーマだ」と語気を強めた。

(古根村進然)

<金融庁の報告書> 金融庁金融審議会が今月、公表した報告書。男性65歳以上、女性60歳以上の夫婦だけの無職の世帯は、平均で毎月、公的年金を中心とする収入が21万円となり、支出を5万円下回る「赤字」になると試算。夫婦が30年生きる場合は約2000万円、預貯金などの金融資産を取り崩す必要があると指摘した。

<消えた年金> 国民年金や厚生年金の保険料を納めたのにもかかわらず、旧社会保険庁に記録が残っていないため「未納」扱いとなったケースが2007年に発覚した問題。だれのものか特定できない年金加入記録は約5095万件に上った。社保庁は09年末に廃止され、業務は日本年金機構に引き継がれた。

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