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滋賀

<解説>「手こぎ舟」が「軍艦」制す

2019年7月22日

 知事選、衆院選含めて4度目の「自民対嘉田」となった滋賀選挙区は、野党統一候補の嘉田さんが、自民の二之湯さんに競り勝った。「もったいない県政」の国政版を掲げる嘉田さんの政治手腕に、期待感が広がった結果と言える。

 とはいえ、嘉田さんが2014年に知事を引退してから、5年がたつ。17年衆院選では非自民票が割れ、自民現職に敗れた。選挙前には自民側から「過去の人」とささやかれ、古希を目前にした嘉田さんにとっては「背水の陣」だった。

 嘉田さんは、知事時代の施策を国政版にして展開すると訴え、変革を望む有権者の心をつかんだ。研究者時代に琵琶湖周辺を歩いて水と人の関わりを調査した経験を生かし、選挙カーでくまなく回ったことも支持拡大につながった。

 前回参院選に続く2度目の野党共闘も、対立する連合滋賀と共産の役割をすみ分けし、それぞれが力を発揮した。嘉田さんの例えを引用すると、手こぎ舟の「嘉田丸」に野党や市民団体が乗り、組織力が強い自民の「軍艦」を追い抜いた。

 対する自民は、安倍晋三首相ら幹部が次々に来県したが、現職の二之湯さんの6年間の実績が有権者に浸透せず、嘉田県政時代の批判に終始した。陣営内部の結束も乱れ、結果、保守票が嘉田さんに流れたことにより自滅した面もある。

 いずれにせよ、自民が独占していた県内の衆参6議席に、野党候補が風穴を開けた。ただ、今後の滋賀の与野党対決が「自民対嘉田」と同じ結果になるとは限らない。17年秋以来の衆院解散もささやかれる。与野党ともに選挙戦略の練り直しが求められる。

 (成田嵩憲)

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