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滋賀

<現場を歩く>(下)消費増税・電子決済 制度複雑、困る商店街

2019年7月3日

業者の社員から説明を受けながら、キャッシュレス決済の申し込みをする商店主たち=長浜市の長浜商工会議所で

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 「返金できるところは、返金したいですけど。本当に混乱しそうで」。長浜市の中心街でコーヒー&ピザタイム「こめか」を営む店長の坪居摩耶さん(39)は、十月の消費税増税後の営業がイメージできないでいる。

 持ち帰りは税率8%、店内飲食は10%。同店は、商店街のアーケード沿いでは持ち帰り用クレープなどを販売し、店内では喫茶営業をしている。持ち帰り用を買ってから「やっぱり店内で」と言う人や、逆に入店後に「子どもが泣くので持ち帰ります」という人も少なくない。

 ほかにも、増税に伴ってメニュー改定に十万円、レジ関連機材の購入費…と、必要となる出費に頭が痛い。「もう全部10%にして、その後はもう税率を変えないで」とさえ願う。

 政府は、スマートフォンなどで決済できる「キャッシュレス化」の促進や消費喚起のため、消費税増税に伴って十月から、電子決済をした消費者に「ポイント還元」をする制度を期間限定で行う。商店街などの中小店では「5%」が還元される。

 全国では電子決済の導入が進むが、同市の商店街で導入例は数少ない。市内の高齢化率は、県内平均を約2ポイント上回る27・8%(今年四月)。後継者が少ない上、高齢者が多い店主たちは、どうしても二の足を踏んでしまうのが現実だ。

 長浜商店街連盟の関連組織が、協力店舗に参加を促して開いた電子決済サービスの申し込み会。初回は約百店のうち、約四割しか集まらなかった。

 導入には、メールアドレスやアップル社のIDが必要。同市大宮町で生花店を五十年営んでいる谷口清士さん(75)は、若手の業者社員の言うままに、パソコンの前で申し込み手続きをした。終えるなり「よぉ分からんわ」とポツリ。パソコンも使った経験がないが、今後は店に届く予定の決済用タブレット端末を使わなければならず、「誰かに教えてもらうしかない」とこぼす。

 「地域は高齢者ばかり。消費者も店主も、電子決済の仕組みは分からんのとちゃうか。政治家は、いっぺん商店街を歩いて現状を見に来てほしいわ」。電子決済が政府の思惑通りに普及するのか、疑問視する。

 電子決済は事業者に3%前後の手数料を強いることから「事業者泣かせだ」との批判も上がる。一定期間中は手数料の補助制度があるが、来年七月以降は3%以上の手数料を強いられる場合もある。

 商店街連盟の沢田昌宏会長(61)は「長浜は中国などからの来日観光客も多く、基本的には電子決済に対応をしていかないといけない」としながらも「手数料が3%では、利益率が低い店舗での導入は無理だ。手数料を下げる施策が必要だ」と訴えている。 (作山哲平)

◆主要政党の消費税増税に対するスタンス

 自民は「全世代型社会保障の構築や財政健全化に向け、10月に消費税率を10%に引き上げる」、公明は「10月の10%引き上げに合わせ、国会議員歳費を10%削減する」。立憲民主は「消費税率10%引き上げは凍結。税の累進性を強化して公平な税制へ転換する」、国民民主は「(自民が掲げる)10月の引き上げには反対。引き上げの前に『子ども国債』を発行する」、共産は「増税は中止。大企業優遇税制などを是正して財源を確保する」、社民は「消費税率10%引き上げに反対」と主張する。

主な政党の公約

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