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長野

<私の主張>(下)憲法への自衛隊明記

2019年7月11日

※上から届け出順

 参議院では現在、自民、公明両党など改憲勢力が改憲発議に必要な三分の二以上の議席を占めている。改憲に意欲を示す安倍晋三首相(自民党総裁)は、参院選の党公約の一つに「憲法への自衛隊明記」を掲げており、選挙の結果次第では議論が進む可能性もある。

 国民民主党現職の羽田雄一郎さん(51)は自衛隊明記案を否定。自民党が二〇一二年に作成した改憲草案に「国防軍」が盛り込まれていたことを挙げ、「軍として専守防衛ではない戦争への参加を止められない状況をつくってはならない」と警戒心をあらわにした。

 自民党は今回の公約で国防軍ではなく、自衛隊を明記する「条文イメージ」を示しているが、羽田さんは「草案に国防軍とあるため(公約には)自衛隊を掲げても名称変更で国防軍になる恐れがある」と指摘する。一五年に成立した安全保障関連法で集団的自衛権の行使が認められたことを念頭に「国民の一人として、自衛官の命も守りたい。戦争に出すのは絶対に反対だ」と力を込めた。

 小松さんは自衛隊明記案には賛同しつつ、「二度と戦争をしないと誓った九条の精神は日本人が永遠に持ち続けなければいけない」と強調。九条はそのままにした上で、自衛隊を書き込む考えを示した。

 環境権やプライバシー権などを例示し、「現行憲法が想定していない問題が新たに出ている」とも指摘。参院選の一票の格差を縮めるため、都道府県単位の選挙区の一部を合区したことについて、各地方の声を国に届けるためにも改憲で解消する必要性を訴えた。

 改憲発議は衆参両院に設けられた憲法審査会で協議するが、現在は与野党が折り合わず議論が進んでいない。小松さんは「国会の場で議論すらされていないのは残念だ」とも答えた。

◆反対 羽田雄一郎さん(51)=国現

 反対だ。自民党の憲法改正草案に「国防軍」が明記されている。国民主権の国家でありながら、緊急事態には国家主権の国家になるような文言も記されている。

 自衛隊は訓練されているが、それは戦争をするためでなく、武力行使を受け、専守防衛に徹するためだ。現在は集団的自衛権の行使が可能となっており、同盟国が始めた戦争に参加できる状態になっている。国民の一人として、自衛官の命も守りたい。自衛隊を戦争に出すのは絶対に反対だ。

 自衛隊は、自然災害などで国民の命を守っている。「憲法に明記してもいいのでは」と考える国民もいるだろう。だが自民草案に国防軍があるため、憲法に掲げたのは自衛隊でも、名称変更でいつの間にか国防軍になる恐れがある。戦争をする国になってしまう。

 国民主権の国家が壊され、国防軍として、専守防衛ではない戦争への参加を止められない状況をつくってはならない。

◆賛成 小松裕さん(57)=自新

 二度と戦争をしないと誓った憲法九条の精神は、日本人が永遠に持ち続けなければいけない。私は自衛隊を憲法に位置付け、「自衛隊違憲論」を解消すべきだとの考えだが、現時点では九条はそのままに、自衛隊の存在は他項で明記すれば良いと考えている。

 憲法改正と言えば、すぐに九条のことが俎上(そじょう)に上り、そのために議論をすること自体を忌避する反応が出てくることは残念だ。

 現憲法施行以来、七十年以上が経過して時代の転換に伴って対応できないこと、想定すらしていなかった事象、例えば環境権やプライバシー権、私立学校への補助金、参院選の合区に関する問題などが新たに出ている。

 地方の声を国に届けるためにも、まず改正すべきは一票の格差、参院選の合区解消だ。憲法改正に関する国民的議論を深めていかなければならない。国会の場で議論すらされていないのは残念なことだ。

主な政党の公約

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