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長野

<長野選挙区情勢>(下)小松さん総力戦

2019年6月30日

南信地域で立て続けに開いた集会で小松さん(左)の話を聞く参加者たち=根羽村で

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 「今日初めて私に会うという方もいると思うので…」。六月下旬の日曜日。自民党新人の小松裕さん(57)は、愛知県境にある人口九百人ほどの根羽村で開かれた決起集会で、こう切り出した。会場に集まった三十人を前に、スポーツドクターとして五輪選手らを支えた経歴などを紹介した。

 この日は飯田市や平谷村、喬木村など南信地域の八カ所を転戦。各地で押し出したのは政策よりむしろ、県議時代を含めて約四十年間この地域を地盤にし、今期限りで引退する吉田博美・党参院幹事長(70)の後継であることだった。

 二〇一二、一四年の二回の衆院選で、北信地域の長野市や飯山市などを含む長野1区から立候補し、比例復活した小松さん。二期五年間を務めて一七年秋に落選した後、一八年十月に吉田さんから後継指名を受けて参院へのくら替えが決まった。選挙区が県内全域に広がった分、知名度不足という課題を抱える。

 陣営が勝利を確実にする得票目標として掲げるのは六十万票。一六年の前回選で自民候補が敗れた民進候補(当時)が得た五十七万票が念頭にある。

 自民の組織を挙げた総力戦を仕掛け、衆院1〜5の選挙区ごとに選対責任者の県議を割り振った。南信地域では、松川町に事務所を構える吉田さんら国会議員の後援会が集会や企業回りなどを主導。事実上の一騎打ちとなる国民民主党現職の羽田雄一郎さん(51)が地盤とする東信地域でも、四月の県議選で一人から八人に増えた党の県議らが支持拡大に奔走する。

 前回選を上回る県内全七十七市町村で決起集会を開き、小松さんの親族らも駆り出して支持を訴える。河野太郎外相をはじめ、知名度の高い政治家も応援に入る予定。連立政権を組む公明党への目配りも欠かさず、小松さんは五月に松本市で開かれた同党の講演会で、同党の支援組織の創価学会の任用試験に合格したエピソードを披露し、満員の会場を沸かせた。

 足場を固めつつあるようにも見えるが、今回は与野党が一議席を争う構図。羽田さんは五選を目指すベテランで、吉田さんが「平幕の最下位が横綱を相手にする戦い」と例えるように、厳しい戦いになると組織を引き締めている。

 ある自民県議は、吉田さんが後継指名した効果について「南信地域だけではないか」とみる。二十六日に長野市で開かれた選対関係者の会合では、女性や若者への浸透が弱いといった指摘も出た。七月四日公示、同二十一日投開票まで残りわずか。地盤だった衆院1区以外でどこまで集票できるかが鍵を握りそうだ。

(我那覇圭)

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