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三重

<主要候補・密着ルポ>(下)芳野正英さん(44)=無新

2019年7月15日

松阪祇園まつりの会場で支援を求める芳野さん=松阪市日野町で

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 現職の背中がなかなか見えてこない。野党統一候補で無所属新人の芳野正英さん(44)は序盤、報道各社の情勢調査で先行を許している。「活動量は絶対に負けていない」。雨となった十三日午後、買い物客が行き交う近鉄四日市駅前で傘を差さずに練り歩いた。地元の四日市市だと名前を知る人が多い。声をかけられると、焦りが見える表情に笑顔が戻った。

 「馬力がある候補者」と選対幹部が言う通り、芳野さんは朝から夜まで県内を駆け回る。午前七時前に企業の朝礼に顔を出し、二十カ所で演説した日もあるが、大きく太い声はかれない。「忙しくしているのが自分に合っている。毎日が選挙終盤のようで疲れを感じない」。日に日に顔が焼けている。

 国会議員秘書、市議、県議と階段を上がってきた。農業や憲法、子育て…。どんな話題を有権者から振られても自らの考えを答える。演説では重点政策の社会保障に時間を割き、「安倍政権の経済効率を優先する政治で格差が広がっている。生活者を守るため政権にノーを突きつけたい」と力説する。地元国会議員らは「政策通」と紹介する。

 追う立場なのは、公示前から知名度不足に悩まされているから。南に行くほど、街頭演説での反応は小さくなる。そこで選対が用意した法定ビラは、円形の厚紙で、イメージカラーの黄色を背景に、青字で名前を大書している。うちわ代わりに使ってもらい、少しでも名前を目にする機会をつくる狙いがある。

 届け出は無所属でも、野党統一候補。街頭に立つ芳野さんは繰り返し強調しているが、「まだまだ三重の野党を代表する候補ということが知られていない」と中川正春衆院議員はみる。先週から、選挙カーには「野党統一候補」と書いたステッカーを張った。

 野党の団結をアピールするため、十三日夕には立憲民主の枝野幸男代表ら野党四党の幹部が演説する集会を開いた。旧民進の代表だった岡田克也衆院議員が各党の調整に動き、「力を合わせ安倍政治を打倒しよう。どうか皆さんの力を芳野候補に集めてほしい」と支援を求めた。

 岡田さん、中川さん、三年前に野党統一候補として当選した芝博一参院議員らも、フル回転で企業回りや演説会を繰り返す。野党間をつないだ市民連合みえのメンバーは、演説会場の設営など裏方として支える。

 芳野さんの妻真美さん(42)は演説会に出席すれば、必ずあいさつする。十日には六百人を前に「助けてください。力を貸してください。最後まで支えていただくようお願いします」と頭を下げた。

 十四日も松阪祇園まつりの会場などを歩き回った芳野さんは、街頭で手を振る人が少しずつ増えてきたと感じる。「王道で勝負するしかない。少しでも多く演説し、出会う人と握手を交わすしかない」。ついに終盤戦を迎えた今、自分に言い聞かせるように語った。 (鈴鹿雄大)

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