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三重

<主要候補・密着ルポ>(上)吉川有美さん(45)=自現

2019年7月14日

買い物客に支援を訴える吉川さん=桑名市の寺町通り商店街で

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 参院選は投票日まであと一週間。事実上の与野党一騎打ちの三重選挙区(改選数一)では、候補者らが支持拡大へ、広い県内を懸命に走っている。主要二陣営の動きを担当記者が追う。

 「北はまだまだ厳しいんです。助けてください」。週末でにぎわう桑名市の寺町通り商店街で十三日朝、自民現職の吉川有美さん(45)が買い物客の手を握って話しかける。「北勢に自民党議員が必要なんです。道路も…」と言いかけると、同行した運動員が「そろそろ次へ」とせかした。

 「訴えが止まらず、予定通り進まないことが多くて」と秘書が苦笑いする。自らを「おしゃべり」という吉川さんは街頭演説の前後、聴衆一人一人と会話することを心がける。母校が同じ東京農業大だと聞けば、一緒に校歌を歌い出す。

 報道各社の世論調査で「先行」と報じられても、吉川さんは「全然、実感も手応えもない」と話す。特に、出身地の桑名を含む北勢は旧民進系の牙城。相手陣営が公示前から地域をこまめに回ってきたとの情報が伝わる一方、自民は組織力で勝るとはいえず、街頭頼みになっている自覚がある。

 この日は十一カ所の街頭で演説をこなした。橋や堤防、道路など身近なインフラ整備が進んできたことを説明し、地域ごとに取り上げる施設を切り替える。「与党議員、女性議員が必要です」と繰り返し、小さな子どもを連れた家族が通りかかれば、すかさず「幼児教育無償化を実現しましたよ」と手を振る。

 六年前にようやく獲得した吉川さんの議席を失うわけにはいかない。党本部も、長く参院選で苦しんできた三重に、次々と応援弁士を送り込む。菅義偉官房長官と小泉進次郎衆院議員が公示前を含め二回ずつ来県し、十二日には安倍晋三首相が県内四カ所で演説した。各会場には数百〜二千人が詰め掛けている。

 九日の小泉さんの演説会場には、「進次郎」と書いたうちわを持った若い女性や家族連れが目立った。ベテラン地方議員も「こんなに子どもが多い選挙演説は初めてだ」と驚くほど、若い世代の関心を集めた。

 こうした「大物」の知名度をさらに活用するため、会員制交流サイト(SNS)も駆使する。安倍首相や小泉さんと一緒の写真はネットで広がりやすい。選対幹部は「広い選挙区で直接会える人数は限界がある。SNSなら政治にそれほど興味のない人に偶然見てもらえる」と期待する。

 もっとも吉川さんは「進次郎さん目当ての人が、全員投票してくれるほど甘くはない」と冷静に分析する。選対幹部も「首相や官房長官を迎えるには、会場準備や人集めが大変。みんな疲れている」と、派手な「空中戦」の負の側面も認める。残る期間は「集会に来ない一般の人に吉川さんを少しでも多く見てもらいたい」と、選挙カーによる街頭活動中心の戦略を練る。

 十三日の桑名の商店街では、吉川さんの後ろで夫の知行さんがのぼり旗を持って同行し、「本人はアドレナリンが出ていて感じないだろうが、疲れているとは思う」と気遣う。それでも吉川さんは「すごく元気で、のどもかれていない。どんどん回りたい」と声を弾ませた。

(森耕一)

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