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三重

<争点 現場を歩く>(下)消費税

2019年7月12日

豆の量り売りをする岡田さん。軽減税率が導入されると、奥の酒類とは税率が異なるようになる=亀山市西町で

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 豆類や乾物といった食料品から、日本酒、日用品まで。明治時代から続く亀山市西町の岡田屋本店は、健康や環境に配慮した商品を幅広く取りそろえる。「うちのような店は負担も手間も大きいかも」。店主の岡田桂織さん(53)が言う。

 予定通りに、十月から消費税率が10%に引き上げられれば、品目によって税率が変わる軽減税率制度も導入される。8%に据え置かれるのは飲食料品や新聞で、酒類や外食は当てはまらない。岡田屋本店のような店は、商品によって税率が変わってくる。

 軽減税率を巡っては、対応レジを導入する際、国が経費の四分の三を負担する補助金がある。岡田さんは「それでも経費はかかる。食品は利益率が低いけど、お客さんのことを考えると、なるべく値上げをしたくない」。近年は輸送料も値上がりする中、価格に転嫁することは控えてきた。「結局、私たちの収入を減らすしかないのかな」

 二〇一四年の消費税増税から五年。戦後最長の景気拡大が続いているとして、安倍政権は社会保障の充実のために再び増税に踏み切る。県内でも有効求人倍率がバブル後期並みの一・七倍前後で推移するなど、堅調な面はある。

 ただ、増税は、家計にも影響が出る恐れがある。中部圏社会経済研究所(中部社研、名古屋市)の試算によると、県内の平均的な家庭では、増税後の負担は年間で三万七千九百円増える見込み。全国平均よりも二千三百円高い。担当者は「三重県は(手取り分の)可処分所得に対する消費支出の割合が多く、増税の影響を受けやすい」と話す。

 国も増税による消費の冷え込みを防ごうと、対策を準備している。その一つがキャッシュレス決済時のポイント還元。中小の小売店でクレジットカードなど現金以外で決済した場合、買い物客に代金の5%がポイントとして還元される。

 中部社研の試算では、増税対策による家計への還元額は、県内では一万八千七百円と、全国平均を四百円ほど下回る。担当者は「ポイント還元の恩恵を受けるのは、キャッシュレス決済が普及している若い世代。この世代の割合が小さい三重県は還元分も小さくなる」と指摘する。

 「10%になると消費が落ち込むのでは」。酒などの嗜好(しこう)品も扱う岡田さんは気をもむ。消費者が安い物を求め、結果的に賃金が下がるデフレの悪循環への懸念からだ。「地域で回るお金を増やすことが大事なのだから、税金よりも賃金をもっと上げてほしい。国はお金の流し方を間違っているような気がする」

 (吉川翔大)

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