• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

三重

主要候補2人の演説を分析

2019年7月9日

 参院選は21日の投開票に向け、与野党の主要候補が連日、街頭や演説会で訴えを続けている。自民現職の吉川有美さん(45)は、幼児教育無償化などの政権の成果を強調。無所属新人で野党統一候補の芳野正英さん(44)は、安倍政権からの転換が最大の争点だと唱える。両候補の演説を分析する。

◆「政権の成果強調」吉川有美さん(45)=自現

写真

 吉川さんが最も強調するのが「安心」のために社会保障を改革する決意だ。四年前に出産したことに触れて、「この子たちの将来に、希望が持てる社会をつくらないといけない」と語る。

 小泉進次郎衆院議員らとともに人生百年時代の社会保障のあり方を考える勉強会をしてきたことも紹介。十月からの幼児教育の無償化など、与党の子育て支援策をアピールする。

 特に北勢を訪れると、民主党政権の「コンクリートから人へ」を批判する。六年前に自分が当選するまで、県北部は衆参ともに長年自民党の国会議員がいなかったと指摘し、「国の予算が入らず、インフラ整備が遅れてきた」と主張。今年三月に新名神高速の県内区間が開通し、慢性的な渋滞が解消された成果を上げ、「与党でなければ予算を獲得できず、政策を実現できない」と訴える。

 元銀行員としての独自性が一番出ているのは、インフラ整備や生活習慣病予防、介護などの社会的課題の解決に、民間の資金を活用する金融の仕組みを導入するという訴え。「財政難を克服し、企業はもうかる」とアピールする。

 多気町につくられるリゾート施設「アクアイグニス多気」につながる高速道路のインターチェンジを、民間資金で建設する計画を例に挙げる。

 野党が批判する改憲、安保法制、消費税増税などに触れることはない。吉川さんは「街頭演説は五分くらい。話したいことに優先順位をつけると、そこまでは語れない」と話す。

 公示前の公開討論会では「特定秘密保護法、平和安全法制、テロ等準備罪。三つの法案を通したことで、私たちの地域はずいぶん守られるようになった」と理解を求めた。

◆「政策転換が争点」芳野正英さん(44)=無新

写真

 芳野さんは「争点はただひとつ。六年半続いた安倍政権を続けるか、ここで終わらせるかだ」と訴える。

 森友学園問題を巡る公文書の改ざんや雇用統計の不正、老後に二千万円不足すると試算した金融庁の報告書を受け取らなかった問題など、政権の体質を批判する。さらに、非正規雇用者が増え、高齢者の生活も苦しくなるなど「安倍政権によって、国民の生活が脅かされている」と強調する。

 老後二千万円問題を巡っては「年金は目減りしていくのに、政府はためなかった人が悪いという」と批判。金融庁報告書が投資を呼び掛けていることについて「経済成長には投資が必要だからだ。首相は社会保障を経済成長の手段としか考えていない」と訴える。

 現役世代の所得が二十年で三分の二に減少していると指摘し、老後の安心のためには「まずは給与を上げることだ」と繰り返す。

 若者や障害者の支援に取り組んだ経験から、「経済一辺倒の社会に苦しみ不登校や引きこもりになる人、十分な訓練もないまま働かされて苦しむ障害者を現場で見てきた」と語る。

 待遇が悪い介護・福祉職、引きこもりの人、共生が問われる外国人など、弱い立場の人に対する国の支援が不十分だとして改善を約束し、「すべての人に居場所と出番のある社会をつくる」と訴える。

 安倍政権による改憲の阻止と立憲主義の回復は、野党統一候補としての公約でもある。「参院選が終われば、政権はいよいよ憲法改正に乗り出してくる」と指摘。「集団的自衛権の行使容認を受け入れることはできない」と安保法制廃止を主張する。

 権力を縛る憲法を首相が変えようとすることの矛盾を強調し「憲法改正を止めるため、体を張って戦い抜きたい」と声を上げる。

 (森耕一、鈴鹿雄大)

主な政党の公約

新聞購読のご案内