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三重

老後2000万円問題、有権者の声は? 

2019年7月8日

 参院選では、公的年金以外に二千万円の蓄えが老後に必要とした金融庁審議会の報告書を受け、社会保障を巡る舌戦が繰り広げられている。県内の有権者からは「年金だけで足りないことは分かりきっていた」と冷静に受け止める声がある一方、将来への不安や社会保障制度への不満も出ている。

 六日に松阪市のホテルで開かれた岡三証券松阪支店のセミナー。百七十人を前に、同社投資戦略部の小川佳紀さんが今年後半の相場の見通しを講演した。「中長期で持っていただければ、ゆっくりと株価が上がり、ご資産形成に役立つのでは」。個別銘柄について解説すると、来場者はメモを取って聞き入った。

 参加した市内の主婦(57)は「金利が低く、定期預金だけでは老後の資金を増やせない」と話す。報告書については「自分で資産形成をしないといけないことは、前から分かりきっていたこと」。ただ、社会保障の充実を目的にした消費税増税には疑問を抱く。「企業は業績が悪ければ、給料を減らす。議員は自分たちの身を切っていないのに、国民の気持ちが分かるのか」

 報告書では、男性が六十五歳以上、女性が六十歳以上の夫婦のみの世帯が平均的な生活を三十年送る場合、二千万円の貯蓄が必要と試算している。

 四日市市のスーパーで買い物をしていた市内の主婦(39)は、まずは一千万円の貯蓄を目標に、食費の節約を始めたが「数百万円をためるのがやっと」という。「夫の給料が下がり、子どもの教育費は上がっている」。報告書を受け取らなかった政府の対応を「うやむやになっては困る」と批判した。

 津駅前で候補者の演説を聞いた松阪市の男性(39)も、政府の対応に「年金の問題と向き合おうとしていない。ふざけるな、という思いだ」と怒りをあらわに。「将来の子どもたちのためにも、どんな人も豊かに暮らせる社会を残せるようにしなければ」と話した。

 社会保障制度そのものへの疑問は、若い世代にもある。三重大工学部三年の尾崎涼佑さん(21)=四日市市=は「年金をもらう年齢になっても、働き続けられるようにしないと」と話す一方、「年金で足りるかどうか以前に、少子高齢化のような根本的な問題がある」と子育て支援の充実などを求める。

 松阪市のセミナーに参加した市内の無職男性(71)は「若い世代も含めた全世代型の社会保障のビジョンを示すべきなのに、政府は決める責任を果たしていない」と投げ掛けていた。

 (吉川翔大、磯部愛、真子弘之助)

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