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三重

年金の安心、守って 避ける自民・攻める野党

2019年7月5日

真剣な表情で話を聞く有権者=4日午後、三重県四日市市で

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 参院選が四日公示され、十七日間の戦いが始まった。令和初の国政選挙で争点に浮上しているのが、年金など老後不安の問題だ。「老後は夫婦で、年金のほかに二千万円必要」とした金融庁の審議会の報告書が明らかになって以来、野党は、今の年金制度は安心できないなどと与党を攻めたてている。公示日の演説で、与野党の候補は年金や老後をどう語ったのか。そして有権者は、どんな論戦を期待しているのか。

 三重選挙区(改選数一)は事実上、与野党候補による一騎打ちとなる。

 「民進党王国」と呼ばれたほど野党の支持基盤が厚い三重で、六年前に勝利した自民現職の吉川有美さん(45)。四日市市での街頭演説では年金問題に触れず、与党議員としての実績を強調した。「新名神高速の県内区間など、長年動かなかった道路工事がこの六年、ようやく進んだ」

 選対幹部は「野党と同じ土俵に乗る必要はない」と明かす。年金制度に問題はなく、争点化に躍起になる野党に付き合う必要はないとの戦略のようだ。

 ただ、四日市市で応援演説した菅義偉官房長官は「お年寄りの生活の柱の年金を守り、充実させていく」と触れた。元厚生労働相の自民党衆院議員田村憲久さん(三重1区)は津市での演説で、安倍政権で雇用を改善したことを強調。「働き手が増えているので高齢者の医療保険財政、年金財政も改善している」と唱えた。

 自民側には危機感もある。田村さんは公示前の決起大会で「こんな時期にあんな報告書が出たから、自民候補の支持率が4ポイントぐらい下がっている」と明かし、陣営を引き締めている。

 一方の野党側。旧民進党で代表を務めた衆院議員、岡田克也さん(三重3区)らの支援を受ける野党統一候補の無所属新人、芳野正英さん(44)は四日午前、四日市市での第一声で「年金にしか頼れない方もいるのに年金は目減りしていく。なのに政府はためなかった人が悪いと言う」と批判した。

 夕方の津市での演説でも、高齢者から受け取ったという手紙の内容を紹介し、年金に言及した。「土地や財産を切り崩しながら農業をしているが、年金や介護で政府には不安と不信しかないと書かれていた。そんな政治を変えてほしいとの思いが胸に刺さった」

 今回は非改選の三重選出の参院議員、芝博一さんは四日市市での応援演説で報告書を受け取らなかった政府の姿勢を批判した。「報告書を受け取らないことが許される日本はおかしいじゃないですか」と力を込めた。

 三重選挙区には諸派新人の門田節代さん(51)も立候補している。

 (森耕一、鈴鹿雄大)

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