• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

三重

<与野党激突>(下)無所属・芳野正英さん 野党一丸、知名度上げ

2019年7月2日

中川衆院議員(左)と共に、小規模集会で支援者と対話する芳野さん=6月29日、伊賀市柏野の柏野公民館で

写真
写真

 まだ知名度が足りない。「演説に反応してくれるのは、地元の四日市なら十人に一人、津だと二十人、東紀州なら三十人に一人」。野党統一候補の無所属新人、芳野正英は、県議の任期を終えた四月から県内を連日走り、痛感する。

 学生時代から民主党を支援し、衆院議員中川正春らの秘書も務めた。いずれは目指すと決めていた国政への初挑戦は、野党が分裂する中で、候補者一本化にも苦労した。

 参院選の一人区で、野党同士が争えば自民党を利する。三年前は、民進党代表だった岡田克也が全国で一本化調整を主導した。狙い通り、三重選挙区では現職の野党統一候補が二万票差で競り勝った。

 だが、岡田の思いとは裏腹に、民進は分裂し、岡田と中川は無所属に。県内の旧民進系勢力は、二人を中心に地域政党「三重民主連合」を起こし、よりどころをつくった。芳野は、民主連合が擁立しながらも、無所属で出馬する。

 三年前の再現を狙う共産との一本化調整は順風ではなかった。共産の県委員会は早くから「三重はうちが降ろすしかない」と前向きだったが、民主連合最大の支持団体の連合三重では、自動車など民間労組に共産への拒否感が強かった。一月からの話し合いは停滞し、五月に主要野党の協議が東京で進み、ようやく芳野への一本化が実現した。

 民主連合と共産は、三年前に続いて市民団体の「市民連合みえ」とそれぞれ協定を結んだ。市民連合を介す「ブリッジ協定」ならば、民主連合は「共産と直接手を結んだわけではない」(幹部)と説明できる。

 芳野は「融和」に心を砕く。大きなホールではなく、市民連合や県議などが主催するミニ集会を一日に何件も回る。保育士の母親には「私が取り組んできた子育てや障害児の支援に力を入れてほしい」と背中を押された。就職氷河期の生きづらさを抱える世代の代表として、福祉の立て直しや引きこもり支援に取り組む思いも伝える。

 老後二千万円不足問題を巡り、芳野は弁舌に抑制を利かせる。「自民支援者でも安倍政権の福祉政策に疑問を持つ人は多い。今は、批判より共感してもらえる話をしたい」。中川は「地方議員として本当によく勉強し、地に足のついた演説ができる」と評する。

 民主連合幹事長の三谷哲央は「途中にわだかまりがあっても、決まれば一丸になって動く。まだ差はあるが、かなり相手を追い上げている」とみる。

 もっとも無所属では不利なことも多い。法定ビラや事務所の数が少なく、政見放送は撮り直しができない。閣僚経験者が次々と応援に入る自民現職のような活動も、現状では難しい。組織と知名度を補うように、岡田も「活動量が結果につながる」と、自ら駅でビラをまき、集会前には来場者を誘導する。

 芳野は「自民が強い県南部で、現政権の漁業政策を何とかしてほしい、と声をかけてもらった」と、少しずつ手応えを感じる。「自民政権は変えられなくても、野党が勝てば、安倍政権を退場させられる」。そう地道に訴えていく。

  =文中敬称略

(鈴鹿雄大)

主な政党の公約

新聞購読のご案内