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三重

<与野党激突>(上)自民・吉川有美さん 挙党態勢、逆風に挑む

2019年7月1日

決起大会で来場者の声援に応える吉川さん(左)と菅官房長官=6月23日、菰野町福村の町民センターホールで

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 老後の二千万円不足問題が逆風となっている。「4ポイントくらい候補の支持率が落ちている。大ピンチです」。六月二十九日夜、松阪市内で開いた自民現職、吉川有美の決起大会で、元厚生労働相の衆院議員田村憲久が危機感を語る。続いてマイクを握った吉川は、声を張り上げ、何度も深々と頭を下げた。「どうか、どうか、どうか、もう一度仕事をさせてください」

 自民は、三重が「民主王国」と呼ばれることに長く甘んじてきた。二〇一三年の吉川の初当選は、一九九八年以来、十五年ぶりの参院選勝利で、全国での自民圧勝の勢いに乗った。

 だが、王国の壁はなお厚い。三年前は、民進党代表だった衆院議員岡田克也の地元として、三重は全国屈指の激戦区に。今回は中立を宣言した知事の鈴木英敬が、当時は自民新人の応援に立ち、伊勢志摩サミット直後だけに首相の安倍晋三も繰り返し県内に入った。新人の得票は六年前の吉川の三十七万を超え、自民として平成で最多の四十二万だったが、二万票差で野党統一候補に敗れた。

 今回、自民は一人区のうち、三重を十六ある激戦区に指定し、六月中は県内九カ所の決起大会に閣僚経験者を続々と呼んだ。二十三日の菰野町では官房長官の菅義偉が「まさに最大の激戦区です」と語った。

 菅は演説後、県内首長や大手企業の工場幹部らと面会した。知事が豚コレラ対策を要請すると、県内初感染を経た三日後に野生イノシシへのワクチン散布が決まった。「官房長官から農林水産省へ働き掛けがあった」(県関係者)。菅は公示日も四日市市に入る。「令和おじさんと評判になり、トップランクの応援弁士。何度も来てくれるのは、それだけ厳しいのだろう」と県連幹部は話す。

 全県で一人を選ぶ参院選では、常に「北」対「南」の構図も語られる。松阪市以南は保守地盤が厚い一方、大票田の北勢は、衆院の議席を旧民進系の岡田と中川正春が守り続ける。吉川の決起大会も、四日市と鈴鹿では空席が目立った。

 岡田がいる四日市から北の衆院3区は、自民の候補予定者が不在のまま。吉川は「3区では衆院議員のつもりで活動してきた」と、新名神高速の県内区間開通を実績に挙げる。「北勢のインフラ整備は遅れている。与党議員がいなければ予算は取れない」

 野党統一候補との決戦は三年前と同じだが、県連幹部は「今回はこちらが現職で知名度は上。北で五分に持ち込めば逃げ切れる」と占う。

 老後二千万円問題が争点化する中、吉川は演説で必ず小泉進次郎の名を挙げる。小泉を中心に党の若手国会議員の勉強会で人生百年時代の社会保障を議論し、「母親として子どもたちの未来に安心できる制度をつくっている」と強調する。

 県連会長の三ツ矢憲生も「一期生が、あれもこれもやった、と言ってもうそくさい。それより母親の立場で語った方がいい」と助言する。安倍や小泉の来県も求め、挙党態勢で臨む。「やっと取り戻した議席。絶対に負けられない」

=文中敬称略

(森耕一)

   ◇ 

 参院選は四日の公示が迫ってきた。三人が立候補を予定する三重選挙区(改選数一)は、与野党による事実上の一騎打ちで激戦は必至だ。主要二陣営の動きを二回に分けて伝える。

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