• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

三重

参議院とは 元議長斎藤さん、元議員高橋さんに聞く

2019年6月29日

 参院選は公示まであと5日。三重選挙区の立候補予定者は懸命に県内を駆け回るが、近年の選挙は投票率の低下が続き、有権者の関心が高いとは言えない。参議院の役割とは何か。県選出の元議長の斎藤十朗さん(79)と、元議員の高橋千秋さん(62)に聞いた。2人は「衆院よりじっくり議論できる場」とする一方で、近年の仕事ぶりに不満も語った。

◆政局に走ってはだめ 元議長・斎藤十朗さん

斎藤十朗さん

写真

 −この三年、参議院では何度も強行採決があり、議論が深まらなかった。

 参議院は熟議、再考の府。「政局をやってはいけない」といつも言っていた。だが、今は衆議院とともに与野党が足を引っ張り合う政局に走っている。今のままなら一院制でいい。

 私も強行採決はしたが、ぎりぎりまで話し合った。談合政治との批判もあったが、最後は野党の側も「こちらも立場があるから強行採決をしてくれ」というところまでいった。顔を立てるとは、法案の修正に応じること。野党も「こちらの言い分も一部は通した」と言える。結果的に、より多くの人が賛成できるバランスのよい法律ができる。

 −衆参の与党が異なる「ねじれ」の時期は参議院が注目された。

 ねじれは必ずしも悪くないが、ねじれを利用して政局をやってはいけない。民主党が仕掛けて、日銀の総裁人事の承認を否決し、石油の税制も否決してガソリン代を下げたことが、政権交代の引き金になった。今度は仕返ししようと、自民党も簡単に強行採決をする。下手に譲歩すると政権を転覆させられる雰囲気になり、話し合おうとしない。

 −参議院改革に取り組んだ。

 衆議院はいつ解散があるか分からないから、あたふたしている。参議院は任期六年で解散がなく、腰を落ち着けて国政に取り組める。中長期的視点で問題をしっかり議論する場をつくろうと、一九八六年に調査会という制度を立ち上げ、三年間は同じテーマで議論をする。内政、安全保障外交、行政改革、環境、資源問題など、時代が合ったテーマも議論した。対症療法ではない、問題の根底を探るような議論ができた。

 今は機能していないが、調査会という器は既にある。改革は舞台装置をつくること。踊るのは議員だ。踊り手の俳優が下手なら、いい舞台をつくっても、いい演技はできない。装置は今もある。どう踊るかだ。

(聞き手・森耕一)

 <さいとう・じゅうろう> 伊賀市出身。参院議員を32年務め、1995〜2000年に議長。参院自民党で国会対策委員長を4年半経験し、参院幹事長、参院会長も歴任して「参院のプリンス」と呼ばれた。父子2代の厚生相にもなった。今月、全国社会福祉協議会長を退任した。

◆政策を議論できる場 元議員・高橋千秋さん

高橋千秋さん

写真

 −参議院の役割は。

 衆議院に比べて任期が長く、解散による選挙がないため、時間をかけて政策を議論し実現することができる。現職のころ、与野党問わず共通の問題意識を持つ議員で集まって意見を交わし、農業や地域活性化の現場を見るために一年で全国三十カ所を回った。

 有権者へのパフォーマンスではない本当に必要な政策を議論できるはずだが、今は選挙への影響を気にして取り組んでいない。人口減少を例にすると、全ての公共サービスを維持するのが難しくなるのが分かっているのに、与野党いずれも政策提案せず、議論が止まったままになっている。

 −今の課題は。

 民主党があったころ、二大政党制が機能し政策の議論があったが、野党の分裂を背景になくなった。政策の議論を参議院で始めても、衆議院の結論が優先される形に戻っていった。衆議院で法案や予算が通過すると世間の関心は低くなり、参議院は衆議院へのチェック機能を発揮できていない。

 面倒見が良い先輩議員がいなくなったことも影響している。民主党なら仙谷由人さんや藤井裕久さん。一期生に「どんどん発言しろ。問題があっても責任は先輩がとる」と。その雰囲気がなくなってしまった。

 参院選は特定の支持政党がない無党派層の影響を受けやすく、国民の本音が表れる。衆参で与野党の議席数が逆転するねじれを生むことにつながるが、ねじれは良い意味で国会の運営に緊張を生む。金融庁の年金報告書の問題などで長期政権のゆるみを指摘する声がある通り、緊張がないと議論は進まない。

 −参院選に何を望む。

 候補者には、有権者が政治に関心を持てる政策提言や政権公約を示すことを求めたい。有権者には候補者の経歴や活動を見て、本当に国会で発言し、三重のために働いてくれるかを基準に投票する候補者を選んでほしい。

(聞き手・鈴鹿雄大)

 <たかはし・ちあき> 津市出身。参院選に初めて挑んだ1998年は斎藤さんに敗れ、2000年補選で初当選後、参院議員を13年務めた。経産政務官、外務副大臣などを歴任。今は医薬品などを扱うコンサルタントのほか、客員教授を務める藤田医科大で人工知能(AI)を使った画像診断の研究に関わる。

主な政党の公約

新聞購読のご案内