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三重

安全保障、分かれる主張 立候補予定者が公開討論会

2019年6月25日

 参院選三重選挙区(改選数一)に立候補を予定する自民現職の吉川有美さん(45)と、野党統一候補となる無所属新人の芳野正英さん(44)は22日、津市内で公開討論会に臨んだ。安全保障を巡り、吉川さんが安保法制の必要性を強調したのに対し、芳野さんは専守防衛に徹するべきだと主張した。社会保障や少子化対策では、2人の主張は公費抑制や負担軽減などで重なることも多かった。

 主催は日本青年会議所三重ブロック協議会。各地で討論会を支援する「リンカーン・フォーラム」の児玉克哉理事が司会を務めた。主催者によると、諸派新人でNHKから国民を守る党員の門田節代さん(51)は出席を辞退した。

  =本文敬称略

◆安全保障 

 −国際情勢についてどう考えるか。

 吉川 二〇一三年の特定秘密保護法、一五年の平和安全法制、一七年のテロ等準備罪はうまく伝わらず、「自民党危ないんじゃないの」という意見をたくさん受け、残念に感じた。「戦争を起こす党の議員の看板は置けない」とも言われた。

 目まぐるしく変わる世界情勢の中、三つの法案を通したことで、私たちの地域はずいぶん守られるようになった。例えば、特定秘密保護法のおかげで、他国からの情報が入ってくるようになった。防衛や機密に関わることを話してはいけないのは当たり前のことだ。

 芳野 戦後七十年、日本は専守防衛に徹してきた。いくら国際情勢が変わっても、ここがぶれては日本の防衛はできない。イラク戦争も後方支援はしたが、それ以上はなかった。

 今、イラン危機が叫ばれているが、イランは親日感情が強い。日本が戦場で一発も銃を撃っていないからだが、安保法制によって限定的にでも集団的自衛権を認め、海外で自衛隊が実際に戦闘に参加できるインパクトは大きい。安倍首相のイラン訪問を一定評価したいが、これも日本が話し合いができるからだ。この外交を続けるのであれば、集団的自衛権はいらない。

◆社会保障 

 −社会保障を維持するために、税金を上げねばならないと考えるか。

 吉川 これまでは人生八十年の制度だったが、今は人生百年時代と言われ、不安を感じて当然だ。医療介護費用は膨れるので、負担から逃れられない。

 社会保障を支えるには三つの要素がある。ひとつは経済成長戦略で、自助でいけるところを増やす。もうひとつは医療介護費の伸びの抑制。三つめに財源の確保。抑制できるところは抑制する。湿布薬やうがい薬は、市販薬があるのに保険が必要か。生活保護の対象をどこまでにするか。安易な増税ではなく、三つの柱のバランスを考える。

 芳野 負担増の議論は必要だが、今回の金融庁の報告書問題は国民に不安を与えた。負担増が先行するのではなく、制度の全体像を示す必要がある。

 支出を抑えることは必要。健康から要介護にいきなり飛ぶわけではないので、その中間のときにしっかりケアすることが介護費抑制につながる。福祉サービスを受けないことのメリットも考える必要がある。介護施設で入所者が介護度五から三に改善すると、施設側には減収になる。介護度が重い方が施設にとっても得になる状況を変えたい。

 −消費税の増税は必要か。

 芳野 十月の消費増税は自民、民主、公明党の合意だ。だが、前提となったのは、それまでに国民の所得が上がっていること。所得が変わらないのに税負担が増えれば消費は下がる。現役世代の所得は二十年前の三分の二になっている。まず所得を戻し、その後に消費増税するべきだ。

 吉川 消費増税は三党で合意し、社会保障に回す配分も明確に決めている。少子化も国難で、増税分を子育てに回していく。10%になったときに経済の悪影響を抑えるため、住宅ローン減税の拡充なども考えてきた。

◆重点政策 

 −力を入れたい政策のアピールを。

 吉川 財政は厳しく、すべてを公でやるのかを問われている。消費増税でも、大切な皆さんの税金を本当に必要なところに効果的な形で配分する必要がある。行政が取り組んできたことに、企業や学校も取り組む。民間のアイデアやお金を入れることで、財政負担を少なくし、社会の課題を民間の力で解決する。

 成果連動型投資という仕組みがある。糖尿病対策などで民間資金を活用し、患者を早期発見し、未病で防ぐことで医療費を抑えられる。米国のインフラ投資の約七割は民間がしている。民間にメリットがあれば投資は進む。財政難を克服し、企業がもうかる仕組みを進めないといけない。

 芳野 福祉クーポン制度を導入したい。子育て支援の場合、子どもが生まれたら一人につき十万円のクーポンを支給する。保育所か幼稚園など、どんな支援を受けるかは選択できる。教育や介護でも、どのサービスを利用するか選べるようにする。これまでの制度を整理し財源は確保する。

 自宅で介護や子育てをしていると、現在は報酬のない労働になる。社会保障制度を利用するほど得とならないよう、制度を使わなかったら還元できるといい。クーポンを使わなかった分は税額控除で戻す。サービスを使わずに済み、社会保障費減を期待できる。

◆少子化対策 

 −晩婚化、少子化対策をどう考えるか。

 芳野 三十代でどういう働き方だったら結婚しているか。正社員だと六割が結婚している一方、派遣社員だと25%にとどまる。働いている世代の所得を上げることが必要だ。三十代の正社員でも、平均年収はかつての六百五十万円から、現在は四百万円台。二十年前の三分の二になっている状況の改善がまずは必要だ。

 吉川 結婚、出産の考えに政治が口を出すことではない。結婚したくてもできない、子どもがほしくてもできない人もいる。だが、経済的な理由で結婚をあきらめる状況があってはならない。幼児教育無償化などの子育て支援に力を入れ、非正規の人でも安心して子育てできるようにする。社会保険全体の0・1%を子育て分野に回すことも提案したい。年間三千四百億円になる。

 (森耕一、鈴鹿雄大)

主な政党の公約

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