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石川

【データで読む北陸図会】(7) 農業人口 25年で6割減

2019年7月21日

際立つ高齢化、増える放棄地

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 緑豊かな里山に真っ白な建物が目を引く。東京都の企業が石川県中能登町に進出した植物工場。密閉空間でレタスが大量生産される。高齢化が進む日本の農業で市場拡大が見込まれるのが、天候に左右される露地野菜ではなく農家や畑を必要としない工場野菜だ。

 農林水産省によると、一九九〇年に全国に約四百八十二万人だった農業就業人口は、二〇一五年には半数以下の約二百十万人に。石川、富山両県は四半世紀で六割以上減った。高齢化も深刻で、六十五歳以上は石川73・4%、富山76・5%。全国平均(63・5%)を大幅に上回り、九〇年と比べて石川は30ポイント、富山は32・1ポイント上昇。耕作放棄地は増え続け、この先、就業人口が一気にしぼむリスクがある。

 一方、同省によると、農業従事者の所得は一七年まで三年連続で増加。自民党は「十九年ぶりの高い水準」とアベノミクスの成果と訴える。経営の規模拡大に挑む若手も増えている。

 奥能登では耕作放棄地を活用した野菜工場が稼働する。ただ、石川県の担当者は「若い従事者が極端に増えることはない。まとまった耕作放棄地がこれからもっと出てくる」と危ぶむ。

 安倍晋三首相は六月下旬、通常国会の閉会後に「地域経済の核は農林水産業」と強調。与党は人工知能(AI)を活用した生産性向上を目指す。参院選で野党各党も農業者の所得補償や地産地消の推進などを訴えているが、特効薬はない。

 富山大極東地域研究センターの酒井富夫教授(農業経営学)は「農村の持続性、永続性を考え、どう生産性を高めていくかが大事だ」と指摘。情報通信技術(ICT)の活用に触れ、「技術革新は必要だが、使い方次第。食の安全安心を第一に、しっかりした将来ビジョンを示す必要がある」と話した。(参院選取材班)

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