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石川

「自衛隊明記」思い複雑 北陸の現役隊員ら

2019年7月13日

「海外、私たちである必要は」

「違憲と言われるのはだめ」

 二十一日に投開票される参院選。改憲勢力が改憲発議に必要な三分の二の議席を維持するか、割り込むかが焦点の一つ。安倍晋三首相は新憲法での「自衛隊明記」を掲げるが、与野党で議論は対立する。こうした現状を北陸で暮らす現役隊員や隊員を志す若者、隊員OBらは、どうみているのか。率直な思いを聞いた。(参院選取材班)

 「困っている人を助けるのは、もちろん大切な任務。ただ、それが海外となると、私たちである必要があるのか」。四十代の男性隊員は本紙に胸中を明かす。

 二〇〇二年、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づき東南アジアに派遣された。現地では他国の軍隊とともに道路や橋の補修に協力。「やりがいを感じた。こんなにも感謝されるんだな、とうれしかった」。その一方で、家族には相当な心配をかけたと思っている。紛争や暴動に巻き込まれることはなかったけれど「海外派遣で長期間家を空けた。妻には不安がられた」と振り返る。

 活動範囲が拡大することへの思いは複雑。「与えられた任務を淡々と。困った人がいたら助け、国民の生命と安全を守る。それが自衛隊だと思っている」。ひと言で賛成、反対とは言えないのが正直な気持ちだ。

 一方、自衛隊を憲法に明記する自民党の考えに賛成する声もある。「自衛隊は必要な組織。違憲と言われるのはだめだと思う。だから、憲法に書いた方がいい」。自衛隊入りを進路に考えている男子高校生(18)は、きっぱりと口にする。

 災害支援に奮闘する自衛隊をテレビで見て「かっこいいと思った」。隊員になったら、国内外の災害支援に貢献したいと強調。「困っている人を助けたい。活動範囲の拡大も、怖さは特に感じない」と見据えた。

 一五年には他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱にした安全保障関連法が賛成多数で可決、成立した。他国の軍隊と一緒に武力行使する可能性には「想像がつかないから何とも言えない」とだけ語った。

 一方、隊員OBからは「後輩」を心配する声も。定年を迎えた男性は「自衛隊が九条に明記されて喜ぶ隊員がどれだけいるだろうか。背広組は現場のことを分かっていない」と厳しい。

 憲法に自衛隊が明記されれば、活動範囲が「どんどんとエスカレートする」と心配も。続けて「正直、全ての自衛官が百パーセントの気持ちで、命をかけて仕事できる精神を持っているとは思えない」と打ち明けた。

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