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石川

小さな川北 大きな民意 前回投票率85% 政治が身近「行かんなん」

2019年7月11日

 石川県には、選挙で高い投票率を続ける自治体がある。川北町だ。三年前の参院選は85・23%で、県内二位、珠洲市の70・37%を引き離し、北陸三県の中でも断トツだった。多くは「自分たちの将来は、自分たちで決める」という思いから投票を欠かさないようだ。(辻渕智之)

選挙ポスターを見る住民=石川県川北町の「なでしこタウン」で(辻渕智之撮影)

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 川北町西部、十五年ほど前に宅地開発が進んだ「なでしこタウン」。三年前の参院選の投票率は95・24%だった。「投票率が高い方が町にモノを言いやすいよ」。五十代女性は引っ越してきた際、古くから住む町民に、そう助言されたという。

 町外から転入した四十、五十代が多く、その子どもたちが十八歳以上になり始めた。今は約五十世帯で、有権者数は百十五人。女性は、なでしこタウンにおける高い投票率が、通学路の安全柵設置などにつながったと感じている。

「町内のために」

 川北町は能美郡で「平成の大合併」に唯一加わらなかった。「独立」を守った形だが「小さい町だからこそ県や国との関係は大事。投票率を上げないと県や国会議員にアピールできない。恩返しの意味もある」と地区役員の経験者は言う。

 町の有権者数は四千八百十三人(三日現在)で、石川県内では最少。町が小さい分、町民は政治を身近に感じられるという。町議(定数一〇)一人当たりの有権者数は約四百八十人。金沢市議の約九千九百人と比べると、「一票の重み」は二十倍になる。

 金沢市からなでしこタウンに移住した五十代男性は「ここは意見を言いやすいし、通りやすい。金沢では『自分が何か言っても仕方ない』と政治が遠かったし、投票もしなかった」と話す。毎回、投票するようになり、二十代前半の娘にも「選挙は必ず行ってくれ。うちらの町内のためや」と投票をうながす。

 「投票所の立会人が知り合いで、投票したか分かってしまう」「かつては、午前中に投票しないと(地区役員から)連絡が来た」。そんな声も町内で聞いたが、そうした「目」が結果として、現在の高い投票率につながった面はある。

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「私たちの手で」

 二十代半ばの女性は「以前は母に誘われるから投票に行ったけど、今は『行かんなん』と思う」と言う。川北町は誘致した企業からの税収をもとに子どもの医療費を無料化し、水道は一世帯、一カ月十立方メートルまで無料で使える。「住民サービスが充実しているし、合併しなくてよかったのかなと。投票に行くのは、町の将来を自分たちで決めたいという思いもある」

 棄権したことのない男子大学生(21)は「大学入試制度の変更とか授業料無償化の動きが気になるので、今回の参院選は教育問題の公約を比べて投票先を決めたい」と話した。今年四月にあった二十四年ぶりの町長選の投票率は86・93%、二年前の衆院選は83・66%だった。今回の参院選も80%を超えると、住民たちは思っている。

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