• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

岐阜

外国人相談員が見た選挙戦は?

2019年7月19日

動画を見ながら日本の選挙活動について語る外国人相談員の皆さん=岐阜市の県国際交流センターで

写真

 ニッポンの針路を占う参院選を、県内で暮らす外国人はどう見ているのか。先月のG20サミットさながらに、県国際交流センター(岐阜市)の外国人相談員3人によるG3(ぎふスリー)サミットを開催し、21日の投開票に向けて最終盤に入った選挙戦の印象を語り合ってもらった。

 −(実際の選挙戦の映像を見ながら)感想は。

 <3人> すごい。

 <我妻> 街頭演説で、ずっと手を振っている。疲れそう。でも聴いている人は少ないですね。

 <長屋> 日本人はまじめ。フィリピンの選挙はお祭りみたいですよ。国が変わるかも、という期待が国民にあります。日本は選挙期間がすごく短いですけど、ほんとに候補者のことがよく分かるんでしょうか。

 <ズオン> ベトナムには日本のような選挙運動はないので、面白い。候補者は大変だなと思いますね。

 <我妻> ブラジル人は選挙に行くのが当たり前という感覚。日本は大統領選のように直接トップを選ぶわけではないから、関心が低いのかな。でも少数の人を大切にしようという候補者の姿勢は感じる。地域の実情の話もしていますし。

 −演説の内容はどうですか。外国人に関する話題はなかったですが。

 <ズオン> あまりよく分かりません。頑張ります、応援します、は分かるけど地域の問題となると…。

 <長屋> 法律とか歴史の深い話題は外国人には難しいですね。どの候補者もだいたい同じようなことを言っている気がします。

 <我妻> 外国人には政治家の発言が届きにくいですよね。候補者の発言の内容に大きな差はなさそう。投票する人はどうやって候補者を比べてるんでしょうか。「つながり」とか、そういうことなのかな。

 −では県内に住んでいる外国人は、どんな問題に関心があるんでしょうか。

 <我妻> 仕事、生活環境…。年金のことは外国人も関心は高いと思います。

 <長屋> でも、仕組みが分かりにくい。

 <我妻> 日本とブラジルは社会保障の協定があり、ブラジルで一定の保険料を払っていれば、日本で年金を受給することができます。でも、そのことはあまり知られていません。

 <長屋> フィリピンもそう。自分が得になる制度があっても知らない人が多い。

 <ズオン> 外国人はビザとか在留資格についても考えないといけませんし。

 <我妻> ベトナム人は技能実習生が多いですが、今の制度だとそのまま日本に永住、定住するのは難しい。4月に特定技能の在留資格ができ、特定の業種では条件を満たせば永住しやすくなりました。ただ、対象業種はすごく狭い。

 −日本の有権者や候補者に伝えたいことは。

 <我妻> 地域に外国人は当たり前にいるんだ、という事実を知ってもらえればうれしいですね。

 <長屋> みんなに選挙への関心を持ってほしい。

 <我妻> ブラジルではストライキやデモがよくある。日本では、国民が意思を示す行動が見えにくい。投票は意思表示の機会。投票することで、何かを変えるきっかけになるかもしれないと思います。

(聞き手・杉浦正至、稲田雅文)

<ド・ティ・トゥイ・ズオンさん(29)(写真左)>

 ベトナムの首都ハノイ出身。2017年、結婚を機に来日。岐阜市在住。「社会主義国ベトナムにある政党は共産党だけで、与野党はありません。5年に1度、地区代表を選ぶ選挙は代理投票も可。日本のような選挙運動もないですね」

<我妻(わがつま)ドウグラス武さん(30)(写真中)>

 ブラジル南部パラナ州出身の日系3世。初来日は3歳でブラジル在住歴は通算5年ほど。各務原市在住。「4年に1度の大統領選は国外にいる人も含めて投票が義務。18〜70歳は投票しないと罰金です。投票率は約80%。関心は高いほう」

<長屋ジネット グチェレスさん(56)(写真右)>

 フィリピンの首都マニラ出身。1988年に来日し、結婚を機に岐阜県へ。瑞穂市在住。「5年に1度の大統領選はお祭りみたい。選挙カーで音楽を流し、テレビCMでは国会議員が踊る。盆踊りのように、ステージで芸能人が歌うことも」

主な政党の公約

新聞購読のご案内