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福井

<私のリーダー論>(4)福井経編興業社長・高木義秀さん(65)

2019年7月14日

高木義秀さん

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 全員で夢に向かうために、リーダーに必要なことは何か。ニット生地製造「福井経編興業」(福井市西開発三)の高木義秀社長は「人に愛情を注ぎ、グループをまとめる力」と語る。

 一九九〇年代後半に同社に二千台あった編み機は昨年、一千台を割り込んだ。繊維産地・福井と言われるが、業界が縮小している。衣料生産では安価な中国が台頭し、小売りはインターネット通販が普及した。変化が続く中、企業として既存事業のままで生き残れるのかを自問自答し、二〇一〇年から、未知の医療分野へ進出した。「衣料業界で利益を出すのは大変な現実。それを直視しながら、将来性のある医療分野での成功を社員みんなで夢を見る」と決めた。

 「シルクの糸で人工血管を編めないか」という大学教授からの問い合わせをきっかけに、直径六ミリ以下の細い人工血管を開発。今年五月には、開発した心臓修復パッチが生後四カ月の乳児に手術に使われた。未知への挑戦だったが、社内でプロジェクトチームを結成して試作と検証を繰り返し、成果に結び付けた。

 社員一人一人の力には限界はあっても、グループで最大限に力を発揮するできる体制をつくることに腐心した。毎週月曜日にマネジャー会議を開いて事業の課題や目的を共有している。社員をけん引するためには「アピール力、印象力、発信力が重要。ぶれないことも大事だ。ぶれると信頼されなくなる」と語る。

 同社は、作家・池井戸潤さんの小説「下町ロケット ガウディ計画」のモデルにもなった。「一階に現実 二階に夢」。下町ロケットの佃航平社長が社員を前にして語った言葉。池井戸さんからもらった色紙に記された、この言葉に共感している。

(長谷川寛之)

 <たかぎ・よしひで> 坂井市丸岡町出身。日本大法学部卒業後、1976年に福井経編興業に入社。2004年に常務、08年に専務となり、18年から社長を務める。趣味はゴルフや読書。65歳

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