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福井

<私のリーダー論>(3)JA越前たけふ組合長・冨田隆さん(76)

2019年7月13日

冨田隆さん

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 リーダーとしての信念は「チャレンジをするならば、次の次を見据えること」。県内一JA化構想を巡り、JA越前たけふは合併しないことを決定した。「みんなの心が一つになれば、無謀な航海にはならない」と、先頭に立ってかじを取る。

 少子高齢化や担い手不足などで、農業、JAを取り巻く環境は依然厳しい。ただ、選んだ道は「特色ある地域JA」だった。組合員らの意向調査で、六割余りが合併に反対する結果となり、その意向に沿う形で、合併ではなく、単独の道を歩むことになった。

 一定品質以上のコメをJAや業者が高く買い取るインセンティブ(有利)買い入れ制度など、地域の特色ある取り組みが薄れる懸念が組合員に多かったことなどが背景にあるとみられる。「合併した場合のロマンや将来ビジョンは、組合員に理解してもらえなかった」と話す。

 現在は五年先の事業計画、十年先の長期ビジョンも平行して協議している。こだわるのは独自性。特色ある取り組みはこれまでにも進めてきた。コメの海外輸出も手掛け、今年は「日本晴」が香港で商標登録が認可された。

 トップに立つ苦労は「何もない」ときっぱり。「みんなの気持ちに添っていくだけ。それが責任」と、職員や組合員らの気持ちを重視することの大切さを挙げる。JAのあるべき姿は「上から目線ではなく、みんなが理解をしながら動けるような形」と、組織のあり方を思い描く。

 地域農協を間近に見続けて五十年超。「(自身は)百姓のおんちゃんです」とおどけながらも、頭の中で、魅力ある地域JAとして進むべき戦略を着々と練っている。

 (中場賢一)

 <とみた・たかし> 越前市出身。1965(昭和40)年に武生市農業協同組合に入組。中央支店長、企画開発部長、参事などを務める。96年にJA越前たけふが誕生。2004年に定年退職し、理事、経営管理委員、理事長を経て10年から組合長。76歳。

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