<私のリーダー論>(2)武生商高吹奏楽部顧問・植田薫さん(60)
2019年7月12日
植田薫さん |
武生商業高校吹奏楽部は県内屈指の強豪。ところが奏でる音楽は一風変わっている。ファンクミュージック。ジェームス・ブラウン(JB)。ファンクバンドで活動する顧問の植田薫さんの影響だ。「僕には大きなポリシーがある。それは『音楽で世界平和』。音楽で人を楽しませることは、世界平和の第一歩だと思っている」
二十四歳で教員となり、これまで大野高、武生東高、武生商高で計三十六年間、吹奏楽部顧問として指導に当たってきた。ファンクバンド「ザ・ニュービーズ」のボーカルも担当。部のコンサートではマイクを握ってJBを熱唱する。
顧問として、部を率いるリーダーとして大切にしてきたこと。それは部員同士の人間的な結び付きだ。そこは絶対にあきらめずにやってきた。
六十人を超える大所帯の吹奏楽部。互いに気に入らない人もいるだろう。気の合う仲良しグループもできるはずだ。どうやって結び付きをつくっているのか。
「とことんぶつかり合わせること」と植田さん。部員同士でもめごとやすれ違いが起きた時には、お互いに、またみんなで話し合わせる。そして相手の考えを理解したり、妥協点を見つけたりする。「人間的な心の結び付きがあって初めて、いい音楽が出てくるんです」
音楽は人間教育、吹奏楽部は社会の縮図だと思っている。部の人数は多い。それぞれ役割(仕事)が異なる。そして一つの音楽(社会)をつくる。いい音楽をつくるには、自分の音(意見)を表現し、他人の音をよく聞き、そして聞いた音をよく考えることが必要だという。
「昔は『俺についてこい』だったけれど、今は『生徒第一』。彼らが生き生きと、将来豊かに生きていくために」
(藤共生)
<うえだ・かおる> 鯖江市出身。小学5年でトランペットを始め、中学、高校で吹奏楽部に所属。大学では軽音楽部でファンクバンドを結成、現在も活動している。吹奏楽部顧問として武生商高では、今年まで6年連続で全国大会に出場している。6年前まで10年間、県吹奏楽連盟理事長を務めた。全日本吹奏楽連盟理事。60歳。