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福井

<政策討論会>(4)原発

2019年7月9日

 参院選福井選挙区(改選数一)の立候補者による本紙の政策討論会の四回目のテーマは「原発」。原子力を巡る国の基本方針によっては、廃炉を除く原発八基が集中する県の将来像は大きく変化する。自民党現職の滝波宏文さん(47)は原発の運転継続と立地自治体の支援を、野党統一候補で共産新人の山田和雄さん(52)は原発ゼロと再生エネルギーへの転換を訴え議論を白熱させた。

滝波宏文さん

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 −原発には「共存」「低減」「即廃炉」などのうち、どのような考えか。

 滝波 一つのエネルギー源では経済効率性や環境への適合、安定供給、安全性の四要素すべてを満たすことができず、組み合わせるしかない。低炭素で経済性が高く、わが国の自主エネルギーと言える原子力は欠かすことができないが、可能な限り原子力に依存しないようにしながら、二〇三〇年度に原子力比率を20〜22%、再エネを22〜24%にしたい。

 ただ脱原発や原発推進という軸の中で自分は「立地派」だ。一番リスクを抱えているのは原子力立地で、例えば避難道の整備や使用済み燃料の最終処分などの必要なものが進んでいない。立地地域の住民の気持ちを第一に考え政府の政策に反映させることが基本だ。

 山田 原子力比率20〜22%を達成するためには全ての原発を動かしてもまだ足りない。原発を新設するなら「なるべく原発に頼らない」という方向性とは矛盾する。

 私は福島県に一カ月ほど滞在し、除染作業の実態なども見てきた。頑張っている方には心苦しいが、現実の福島を見ろということに尽きる。原発は存在するだけで危険だ。絶対に動かさず、動いているものはすぐ止め、新しい原発を造らず、ゼロにする。

 原発に代えて再生可能エネルギーの開発と普及に力を注ぐことが大事だ。各地域の気象条件や地形を生かした小規模なものを数多く作り、過疎地でも新しい雇用が生まれる。地域振興策と合わせてのエネルギー確保が必要だ。

 滝波 小水力や木質バイオマスなどの、地域振興のための再エネは政府も勧めているし大賛成だ。しかし大都会や大産業に電力を送ることで日本経済は成り立っている。原発はすでにあり、使用済み核燃料の処理にもお金が必要だ。安全性の対策をとり、原子力を回しながら財源をつくっていくべきだ。

山田和雄さん

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 山田 電力会社だけでまかなえない膨大な被害をもたらすのが原発だ。米国では大企業が太陽光発電などの再エネを使い、使用電力をすべて自社で賄う努力をしている。参考にできる。

 −四十年超の原発の運転延長が今後、本格的に議論される。

 山田 老朽原発は、建設当時の安全水準でいえば四十年が限度だったはずではないか。危険で老朽化したものを絶対に動かしてはいけない。

 滝波 六十年まで延長できるのは福島事故後に決めたルールで、米国では八十年に伸ばそうという動きもある。世界で最も厳しい安全基準で、独立性の高い原子力規制委員会が再稼働や延長を認めたものについては、事業者がきちんと安全対策をして、立地自治体の了解を得ながら進めていく。

 山田 福島事故前も「日本の原発は世界で最も安全」と言われていたのに、事故が起こったのが現実だ。美浜原発も特定重大事故等対処施設の期限まで四十年超運転をしようという動きがあるが認められない。

     ◇

嶋谷昌美さん

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 政策討論会後に出馬会見した諸派新人で政治団体「NHKから国民を守る党」の嶋谷昌美さん(48)には本社で、同じ質問を記者が尋ねた。

 −原発に対する基本的な考え方は。

 できるだけ廃炉に近づけていくのが理想だが今すぐには無理だと思う。福井県の中で、原発のお金で潤っている方もいる。安定的に供給できるのは、今はまだ原発だ。太陽エネルギーなどもあるが、売電買い取り(FIT制度)が急に終わってしまったりしている。まだもう少し原発に頼らざるを得ないのかなと。

 −四十年超運転はどう思う。

 私も詳しくないので、四十年超が本当にアウトなのか、本当のところが分からないので、何とも言えない。

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