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福井

<争点を歩く>アベノミクス 建設活況、製造は明暗

2019年7月7日

県内の製造業は業種によって明暗が分かれている

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 今回の参院選は、安倍政権の六年半の審判とも言える。政権が看板政策として掲げてきた「アベノミクス」は、県内経済に「好循環」をもたらしたのか。現場を歩いた。

 「防災関連の工事や新幹線、国体関連でも受注があり、業績は良い。設備投資をする企業からの仕事も増えている」。福井市の建設会社の役員は、景気回復に感謝する。

 アベノミクスの「三本の矢」の一つ、財政政策による国土強靱(きょうじん)化は、県内の建設業に潤いをもたらした。東日本建設業保証福井支店がまとめる公共工事の動向では、二〇一八年度の請負金額が過去十年で最高の千四百一億円。北陸新幹線の延伸も経済効果をもたらしている。

 製造業は外需型、内需型で明暗が分かれている。

 輸出企業へ機械部品を供給する福井市の企業の幹部は「ここ五、六年は順調だった。採用、設備投資も進められた」と振り返る。一方、内需向けが多い同市の繊維会社の社長は「事業所数が減ったので仕事は回ってきているが、景気回復の実感はない」と明かす。

 「昨年対比で売り上げの減少が近年続いている。アベノミクスの恩恵、景気回復効果はまったく感じない」と話すのは、福井市内のショッピングセンターの男性だ。

 「一人あたりの購入金額は微減続き。どこのショッピングセンターも同じだと思う」と肩をすくめる。近県の大型商業施設オープンやドラッグストアの相次ぐ出店、インターネット通販の普及などもあって、小売り環境には逆風が吹いている。

 政府は一月、月例経済報告で「戦後最長の景気回復」との見解を示したが、日銀の六月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業の景況感は二期連続で悪化。県内企業からも、景気減速への不安の声が聞こえてくる。

 別の同市の繊維会社の幹部は「(アベノミクスの)恩恵はない。前回の東京五輪後は景気が落ち込んだ。今回の東京五輪後も落ち込むのではないか。そう思って経営体質の強化に努めている」と危機感を強める。

 県立大学地域経済研究所長の南保勝教授(地場産業論)は「アベノミクスの第三の矢『成長戦略』は産業の育成につながっていない。新しい産業政策や社会政策が必要だが、見えて来ない。そこが将来不安につながっている」と分析し、現状をこう評する。「アベノミクスが失敗とは言わないが、『道半ば』とするには時間が経過しすぎている」

 (長谷川寛之)

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