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福井

<政策討論会>(2)憲法/相手候補への質問

2019年7月7日

 参院選福井選挙区(改選数一)の立候補者による本紙の政策討論会の二回目は「憲法」。改憲による合区解消は、次の合区対象になる可能性が高い福井選挙区にも重要なテーマで、自民党現職の滝波宏文さん(47)は賛成、野党統一候補で共産新人の山田和雄さん(52)は反対の立場を打ち出した。併せて「相手候補に答えてほしい質問」も尋ねた。

 −憲法改正の必要性をどう考えるか。

 滝波 戦後七十年以上がたち、今の憲法ができてから国際情勢も社会や経済の状況も変わっている。他国ではフランスが約三十回、ドイツが六十回、米国も六回憲法を改正した。情勢の変化に合わせて国が生き残るために、改憲をするのが普通なのだが、日本はそれができていない。早期に憲法改正するべきだ。

滝波宏文さん

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 山田 安倍首相は憲法に自衛隊を明記すると言うが、安全保障関連法で自衛隊は米国の戦争を補完する軍隊になった。安倍首相が自分で自衛隊を憲法違反の状況にしてしまったのに、憲法に明記しようとすることは無理筋だ。

 トランプ米大統領は五月の来日の際、海上自衛隊の護衛艦について「さまざまな地域の紛争に対応してくれるだろう」と言い、米国の戦争を自衛隊に肩代わりさせようとしている。その下での憲法改悪は日米同盟や安全保障には役に立たず、改憲は絶対許さない。

 −参議院の選挙区の合区を解消するために改憲する考えについては。

 山田 合区解消も改憲の口実にするのは無理だ。憲法は国会議員を全国民の代表と定めている。自民党案は参院議員を県の代表と位置付けて合区を解消するものだが、憲法の性格とは相いれない。

 滝波 最高裁が参院の一票の格差を違憲状態だとする判決を出したため合区が行われたが、他の先進国では上院を各地方の代表としていることが多い。

 また、これまでは人口がほぼ対等な四県が二つの合区をつくったが、次に対象になりそうな福井と石川の合区は人口が一・五倍の石川の人が有利で、福井から二度と参院議員が当選しない。憲法改正で合区を解消しなければ、福井から参院への代表者がいなくなる。

 −相手にこれだけは聞いておきたいことは。

山田和雄さん

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 滝波 合区についてさらに聞きたい。合区で福井から参院への代表者がいなくなってよいのか。

 山田 議員定数を増やせば合区をしなくてもよくなる。より基本的な改善策は参院を完全比例代表制にすること。改憲による合区解消は自民が強い選挙区のための党利党略だ。

 −山田さんから滝波さんへは。

 山田 年金、農業、食糧などの政権に不都合なテーマは八月に先送りでよいのか。年金の支給水準の将来見通しは公表が参院選後になる。日米貿易交渉でも、トランプ大統領が農産品や牛肉について「大きな進展がある」とツイートしているが、発表は参院選後だという。

 滝波 年金は財政検証を五年に一回やり、今年がその年だ。さまざまな試算をして公表がずれ込んでいると聞く。丁寧に検証すべきなので仕方がない。

 食糧や農業については国際交渉なので、トランプ大統領のツイートも交渉戦術なのではないか。政府与党は、環太平洋連携協定(TPP)以上の譲歩はしないと明確にしている。私もふるさとの農業を守る気持ちで全力で頑張りたい。

◆自衛と軍は全然違う 嶋谷昌美さん

嶋谷昌美さん

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 政策討論会後に出馬会見を開き、政治団体「NHKから国民を守る党」公認で立候補した諸派新人の嶋谷昌美さん(48)には、改憲と自衛隊について記者が尋ねた。

 −憲法改正の必要性をどう考えるか。

 自衛隊は明記した方がいいのかな。例えば戦争に、戦地に行くことは命に関わる。それを含めての自衛隊なのか、もしもの自衛と被災地支援が役割なのか。入隊する人の心積もりもある。(自衛隊の位置付けは)はっきりした方が良い。それも含めて、憲法改正は国民の意見を聞き、国民投票という形で決めていかないと難しい。

 −自衛隊の海外展開については。

 戦地に行かなければいけないのなら、問題と思う。困るのは隊員だ。日本のために行く気持ちはあると思うが、本当に腹をくくれているのかなと。私は自衛と軍は全然違うと思う。

 <参院選挙区の合区> 参院選の「1票の格差」拡大により最高裁で「違憲状態」の判決が続いたことを受け、2016年の参院選で初めて導入。人口の少ない鳥取、島根両県と徳島、高知両県を、それぞれ一つの選挙区に統合した。全国知事会は地方の声が届かなくなるとして合区解消を求めている。自民党が掲げている改憲の「条文イメージ」では、都道府県の選挙区で改選ごとに少なくとも1人を選挙すべきだと明記し、合区解消を打ち出した。一方、参院議員が地域代表の性格を帯びることから、国会議員は「全国民を代表する」と定めた憲法43条と整合しないという指摘もある。

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