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愛知

<問われるもの>(下)年金、安倍政治 名古屋外国語大教授・高瀬淳一さんに聞く

2019年7月4日

高瀬淳一さん

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 参院選は争点がなかったが、年金不足の問題が浮上し、一気に争点化した。それは争点にしたい人がいるから。高齢者は投票率が高く、人口比率も高い。その人たちにとって大事な年金が信頼できないとなると、野党にとっては有利になる。安倍政権の支持率が高い中、野党はポイントを稼ぎたいところだろう。

 マスコミの世論調査で、安倍さんが支持率40%台をキープしているのは奇跡に近い。小泉純一郎元首相は下がってくるとサプライズで保った。安倍さんはいろいろなことをごまかしているが、支持率が高いままなのは政治がうまいからだ。

 学生たちに聞いてみると、自民と野党第一党の立憲民主のどちらが保守だか分からないという。「憲法守れ」というのは保守に見え、「人づくり革命」とか「生産性革命」と言っている安倍政権が革新的に見える。政治という営みは現状打開の美学。ぶち壊すことも含めて何かを変えるかもしれない政治家を人々は支持しやすい。

 年金問題は重大な争点だが、どんな制度が良いかは専門家にしか分からない。ちゃんと説明してるか、本当に実行できるかという目で候補者を見た方が良い。それは庶民感覚で分かると思う。野党は実行力がないように思われがちだが、与党の政策をチェックして修正すれば実行したことになる。

 差別的な発言や女性蔑視の発言をしないのは基本だが、「若いエネルギーを」としか言わないとか、悪口を言っているだけというのは駄目だ。言葉でちゃんと人を動かす力があるか見極めてほしい。 (聞き手・中崎裕)

 たかせ・じゅんいち 1958年、東京都生まれ。早稲田大大学院政治学研究科修了。専門は情報政治学。政治家の言葉の分析やサミット研究で知られる。著書に「武器としての<言葉政治>」など。名古屋外国語大世界共生学部長などを経て、現在は同大グローバル共生社会研究所長。

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