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愛知

<問われるもの>(上)年金、景気、エネルギー政策 経済アナリスト森永卓郎さんに聞く

2019年7月2日

森永卓郎さん

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 参院選が4日公示され、21日の投開票日に向けた選挙戦が始まる。10月の消費税増税や老後資金2000万円問題、6年半にわたる安倍政権への評価などを争点に、候補者たちが繰り広げる訴えのどこに注目し、どう見極めたらいいのか。経済や暮らし、政治家の資質など参院選で問われるものを3人の識者に聞いた。

   ◇

 注目する争点は三つある。年金と景気対策、エネルギー政策だ。

 夫婦で老後に二千万円の蓄えが必要とした金融庁審議会の報告書問題を野党は批判している。ただ高齢者を支える現役世代がどんどん少なくなる将来に向け、しっかりした対案を出せるのか。今の大学生が年金受給者になる二〇六五年ごろには、現在の半分しか年金はもらえなくなる。世代間でものすごい不平等がある。

 政府与党は七十歳まで就業機会を確保することで受給開始年齢を引き上げ、ぎりぎり年金を維持しようとしている。これに対し、赤ちゃんからお年寄りまで一律に現金を給付し、世代間の不平等を解消する「ベーシックインカム」に野党が踏み込めるかどうか。

 世界経済は失速している。今、消費税を上げればデフレに戻り、税収が落ちることで財政が破綻する。安倍政権の下で、実質国内総生産(GDP)は増えた。アベノミクスがパイを大きくしたことは確かだが、一方で実質賃金は下がり、百万ドル(約一億一千万円)の投資可能資産を持つ富裕層が増えた。富裕層の収入源となる株や不動産の譲渡益税は分離課税で20%なのに、三百数十万円の給与所得からはさらに大きく引かれる。今必要なのは消費税の増税ではなく、庶民に対する減税だ。

 エネルギー問題も重要。政府は太陽光発電の固定価格買い取り制度をやめると言っている。事実上の原発回帰で、争点になるはずだ。選挙戦を通じ、有権者には政党だけでなく、個々の政治家の政策を見極めてもらいたい。私が挙げた三点を見れば、候補者がどういう人か、分かるはずだ。

 (聞き手・立石智保)

 <もりなが・たくろう> 1957年、東京都出身。東京大を卒業し、80年に日本専売公社(現日本たばこ産業)に入社。経済企画庁への出向などを経験した。「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)など著書多数。テレビのコメンテーターなどでも活躍する。独協大教授。

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