富山

県議選終盤戦ルポ

2015年4月10日

 県議選は十二日の投開票に向け終盤戦に突入し、各選挙区で舌戦が熱を帯びている。現職二人と新人が三つどもえで争う氷見市、現職、新人の一騎打ちとなった滑川市の両選挙区をルポした。(統一地方選取材班、届け出順、敬称略)

自民独占か阻止か

氷見市

 十二年ぶりの選挙戦となった氷見市選挙区。自民現職の梶敬信(64)と自民新人の藪田栄治(56)、社民現職の菅沢裕明(73)が、二つの椅子をかけ激戦を繰り広げる。議席独占をうかがう自民だが、梶、藪田の両陣営に共闘の動きは見られず、独占阻止を掲げる菅沢とともに票を奪い合う混戦となっている。

 「九千から一万一千票の間に三人が並ぶ厳しい戦いだ」。梶は個人演説会で横一線を強調し、危機感をあらわにした。街宣やつじ立ちを繰り返し、六期二十四年の実績と県政とのパイプの太さをアピールしている。

 藪田は連日、四カ所で個人演説会を開き「十二年間選挙がなかったことが、政治への無関心を生んだ。新しい風を吹き込みたい」と世代交代を主張。早朝に国道沿いで通勤の車に手を振り、知名度アップに必死だ。

 保守票を食い合う両陣営には、同じ保守分裂となった二〇一三年の市長選をめぐるしこりが残る。前市長で参院議員の堂故茂が推した候補が、梶が応援した本川祐治郎に敗北。藪田が堂故の秘書だったことから、自民関係者からは「二議席獲得は大義名分で、夢物語」との声も漏れる。

 菅沢は自民同士のさや当てを批判。「独占を許すと権力闘争や派閥争いになる。市民の声が県政に届かなくなる」と、議席死守を呼び掛ける。地域をきめ細かく回り、生活安定や福祉充実を訴え、個人票をまとめる。

 いずれも地盤は市中心部で、各陣営とも「票が読めない」と口をそろえる。戦いは混沌(こんとん)とした情勢のまま投開票日を迎えそうだ。

実績、連携訴え激突

滑川市

 三期の実績か、市長との連携か−。滑川市選挙区は、三期十二年の実績を訴える自民現職の神田真邦(50)と、市長の上田昌孝が支援する無所属新人の沢谷清(63)がしのぎを削っている。

 「滑川の政策を県に受け入れてもらうには、知事との信頼関係、県庁との日ごろの付き合いが重要だ」。神田は市内で開いた個人演説会で、三期で培った知事や県とのつながりをアピールした。

 昼間は企業回りと数回の個人演説会、夜は四回の演説会をこなし、保守票を中心に支持を固める。自民現職の強みを生かし、自民の国会議員や県議、市議が入れ代わりで応援弁士に入る。弁士は「県議会は自民が過半数。誰が県議なら、自分たちの声が届きやすいかを考えて」と訴える。

 一方の沢谷は、市長の上田と二人三脚の選挙戦。昼間の企業回りには上田も公務が空いていれば同行。夜の三回の演説会には、欠かさず上田が顔を出す。

 「滑川市は福祉や地産地消などの分野で先端を行く。市長の政策を県にも持って行きたい」。沢谷が演説会で訴え続けるのも上田との連携だ。

 政党の支持や推薦を受けない「市民党」を掲げ、保守から革新まで幅広い支持集めに努める。弁士は「市の要望を県に伝えるとき、市長と一緒に訴える県議を」と力説する。