富山

【向き合う 統一地方選の争点】(1)人口減少都市へ流出 どう打開

2015年4月5日

町唯一のショッピングセンター。高齢者の買い物客が目立つ=富山県朝日町で

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 「働く場所がなく、若者は出て行く。客足も減ってきた」。新潟県境に近い富山県朝日町の中心部。北陸新幹線開業で経営がJRから県などの第三セクター会社に移ったあいの風とやま鉄道の泊駅で、タクシー運転手の男性(72)が嘆いた。

 人口一万二千人余りの米作中心の農業の町は、県内でも特に人口減少が進む。ここ数年は年間二百人ずつ減っているという。

 高齢化が進み地域住民の購買力は低下した。後継者不足も追い打ちを掛け、小売業は激減。打開策が見いだせない。朝日町商工会の氷見良章会長(70)は「企業誘致を進めてほしいが、働ける人が少ないので悪循環だ」と頭を悩ませる。

 町は「県内一の子育て支援」を掲げ、新年度から中学生の医療費無料化などを打ち出す。「若い世代の定住を図りたい」狙いだが、県の財政支援に頼らざるを得ない現状がある。

 国立社会保障・人口問題研究所が二〇一三年三月に公表した将来推計人口で、一〇年の人口を一〇〇とした場合、町の人口は四〇年に五五・三。隣の石川県では能登町の減少率が最も高く四五・五。人口が半数以下になる計算だ。

 「ショッキングな数字。より危機感が募った」。能登町の担当者は突きつけられた現実に向き合う。〇九年度から空き家情報をホームページで紹介したり、住宅の新築や改築の費用を助成したりと、試行錯誤を続ける。

 助成制度を活用しこの六年、進学で離れた学生が就職で戻ったり、地方で就職したりする「U・Iターン」、都市部に移住した人が地方の故郷近くに戻る「Jターン」で十二世帯が移り住んだ。全体からみればわずかだが、四月に地域戦略推進室を新設し、人口減対策を強化した。

 しかし、奥能登の地理的ハンディもあり、流出が心配される若者の雇用確保は一筋縄にはいかない。高校生らの地元志向は強まるが、就業できる業種が限られる。町は地域を支えてきた一次産業に着目し、宇出津港で水揚げする魚介類の鮮度維持施設などの新たな設備を導入。持木一茂町長は「雇用の中身の充実を急ぎたい」と、まずは人口減少のスピードを緩めることに努める。

 一方、一九八〇(昭和五十五)年の町制施行以来、人口が右肩上がりで注目を集める石川県川北町。八四年に現在のジャパンディスプレイ石川工場が立地。固定資産税収入などが増え〇八年度以降、町税額は年十五億〜二十億円。一二年度の税収は町民一人当たり約二十六万円で八〇年の約六倍に。町は安定財源を基に安い保育料など手厚い福祉施策を次々と打ち出し、周辺もうらやむ存在となった。

 将来推計人口で四〇年も増えるとされるが、町担当者は「机上の計算。現実はそう甘くない」と冷静だ。同社の町税収入は全体の約25%を占め、同社の経営状態に関係なく「工場閉鎖の不安は常につきまとう」と打ち明ける。

 急激な人口増は財政を圧迫するため、誘致企業だけに頼らない緩やかな増加を目指す町。住宅や工場などへ転用する際の条件が厳しい優良農地が多いのも悩みの種だ。担当者は「人口増には働く場所と住む場所が必要。だが厳しい基準が足かせになっている」とジレンマも抱える。

  (青木孝行、志村拓、世古紘子)

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 北陸新幹線開業の追い風を生かすため、北陸が抱える課題にどう対応するべきか。人口減少や地域格差の懸念など課題山積で迎えた統一地方選。県議選真っただ中で、議員が向き合うべき現場を追った。