富山

無投票危うい県議会 富山県内「13」中「5」選挙区で可能性 

2015年3月28日

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専門家「正統性揺らぐ」

 統一地方選・都道府県議選の四月三日告示(同十二日投開票)まで残り一週間となり、富山、石川両県議選の候補予定者もほぼ固まった。富山は十三選挙区のうち五選挙区が無投票の可能性があり、四年前より一つ多い見込み。石川は十五選挙区のうち十選挙区で無投票が濃厚で、県選管によると十選挙区なら戦後最多。住民から、現職が安定し、人口減対策などで結束すべき時に争いを避けたいとの意見がある一方、選択の機会が奪われると嘆きも。専門家は、無投票が多いほど県議会の正統性が揺らぐ危険性を指摘する。(統一地方選取材班)

 富山は二〇〇七年の前々回は戦後最多の八選挙区が無投票で今回の石川並み。石川の無投票は戦後は一九七九(昭和五十四)年の七選挙区が最多だったが、上回る可能性が高い。両県とも自民党「一強」で現職に安定感を感じやすく、民主党など非自民系が候補を擁立しにくい状況も要因のようだ。

 富山県西部のある首長は「現職が活動を通じ信任されてきたことの表れでは」と指摘。活発に政策論議する選挙は民主主義の基本として必要性は強調しつつ、「地元選挙区は正直、落ち着いてほしい気持ちもある」と本音をのぞかせた。

 石川は能登地方はすべて無投票が濃厚。珠洲市の男性は、人口減対策など地域課題が山積する現状に触れ「県とのパイプ役を果たす現職の足を引っ張るより、協調し支えていこうという思いがある」と話す。

 一方、富山市の男性会社員(37)は「欠かさず投票に行っているので機会が奪われるのは残念」と嘆く。その上で「知事や地元市長なら知っているが、県議会はやや存在感が薄く、県議の顔が浮かばない。有権者の関心の低さも無投票を許す一因かも」と語った。

 県東部のある市議長も「なぜ立候補しないのか疑問だ。選挙で選ばれてこそ価値がある。有権者の関心が薄いのは、県議が市議より遠い存在になっているからでは」とみる。続けて「一般市民の出馬は地盤もなく難しいかな」とも話した。

 北陸の情勢に詳しい河村和徳・金沢大法務研究科講師(地方政治論)は「無投票が多いと議会の正統性が失われる。住民と議会の思いがずれ、民主主義が揺らぐ」と危惧。「選挙戦を行うための区割りになっていないのでは。県議自身で区割りを決めるのは限界。第三者が加わって見直すべきだ」と指摘する。

 さらに「現職が評価されているから無投票がいいとの考えでは、有権者が黙らされることになる。政治にパーフェクトはない。選挙で謙虚に批判も受けることこそ民主主義」と投げかける。