滋賀

<市の課題を探る>近江八幡編合併のしこり解消を

2015年4月24日

 旧近江八幡市と合併して五年。全有権者の15%ほどを占める旧安土町に、全候補者の三割強の九人が出馬。前回選挙より二人増え、合併後の旧町の在り方、まちづくりをめぐって舌戦が続く。

 ある現職男性は「合併賛成派と反対派の構図がそのまま乱立につながった」。今でも合併の“後遺症”を感じており、別の現職男性は「市長派が多くて議会に緊張感がない。合併の検証もできていない」と議会の現状を憂いた。

 五年前の合併は、手続きが強引だとして安土町民が反発し、町長解職(リコール)を成立させ、出直し町長選で反対派が当選。町議会も合併反対派が占めたが、合併確定後だったためくつがえることはなかった。その後の経緯を見ても住民にとって大きな支障はなかったはずだが、心情的なしこりを指摘する声は根強くある。

 旧安土町の町長として五年前の合併に関わった津村孝司副市長は「合併に対して今でも不平不満を言う人もいるが、五年が経過してインフラ整備は進み、生活しやすくなった。五年前はもろに『合併反対』が日常会話にあったが、今はもうないと思う」と後遺症を否定。その上で「これからは、安土のことだけでなく、オール近江八幡で考えてもらえれば、さらにいい町ができる」と五年前の節目を肯定的にとらえる。

 旧町域からの女性候補者は三人。現職候補は「市長と真っ向勝負し、安土の声を届けたい」と意気込み、元職候補は「今一番必要なのは、議会で市長にはっきりものを言える議員」と主張。新人候補は「安土だけでなく、市全域を意識して活動したい」と考えはそれぞれだ。

 かつて観光行政に携わった主婦(56)は「本音を言えば、候補者を絞った方が良かったが、町をなんとかしたいという意欲の表れ。いろんな目線でこの地域のことを考えてほしい」と期待する。「合併して良かった、悪かったと考えるよりも、これからの安土地域をどうするのか考えてほしい」と続けた。

 合併後二回目の市議選。「しこりをリセットし、地域を見つめ直す機会になれば」との町民の話が耳に残る。

 (前嶋英則)