滋賀

<市の課題を探る>彦根編市民巻き込み活力を

2015年4月21日

彦根城をはじめとした中心市街地の街並み。活力を維持するための今後の市の動向に注目が集まる=彦根市で

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 かつて明治時代と昭和初期の二度、大津から県庁を移転させる動きを起こした彦根。いずれも実現しなかったが、県内第二の都市として存在感を示してきた。だが近年、平成の大合併や県南部のベッドタウン化で人口は県内十三市の中で五番目の規模まで落ちた。

 市の試算では二〇一九年をピークに人口は減少に転じるという。ただピークが早まる可能生は高く、市南部や旧市街地を中心に進む高齢化も相まって地域活力の衰退が懸念される。

 少子高齢化と向き合い、人口減少に歯止めをかけるため市は二月、実効性のある対応策を検討する「市まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げた。本年度中に産業の活性化や雇用の創出、子育て支援を中心に定住人口増加を見据えた向こう五年間の総合戦略を策定する。

 定住に対して交流人口の増加について、核である観光分野では、彦根城の来場者数は七十万人台で推移していて堅調だが、城周辺の観光地を周遊する環境が整備しきれていないため、滞在者が少ないのが長年の課題となっている。

 市によると、昨年の延べ観光客数は三百万人。うち、宿泊客は一割強でほとんどが日帰り客という。早急な対策が求められる中で市は本年度、市長の諮問を受けた市経済活性化委員会で、観光をテーマに市内の観光事業者の意見を取り入れながら、中長期的な観光振興計画を策定する方針だ。計画が新たな起爆剤となるか、注目される。

 活力あるまちをつくるためには市民の力も欠かせない。彦根商工会議所では、民間活力で彦根ならではの商品やサービス開発に向けた活動を進めている。県内の他市での成功例も参考にしながら、まちづくり会社設立も模索する。今後は、行政が市民を巻き込み両者が一体となることが一層、重要になってきそうだ。

 ただ、彦根は慢性的に投票率が低い。ここ十〜十五年、国政や地方選を問わず県内で下位の状況が続き、前回の市議選は45・65%。この現状に、県立大の大橋松行教授(政治社会学)は「(投票率が)50%を割るのは正常な状態でない」とした上で、「目立った争点がない中、生活感覚から自分の考えに合致するか近い候補者を選んでほしい」と、自分たちが住む街に目を向けるきっかけにしてほしいという。

(曽田晋太郎)