滋賀

<市の課題を探る>大津編民間委託はどこまで?

2015年4月20日

指定管理者制度の問題点を指摘する森下元館長=大津市の県立図書館で

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 十一日午後、県立図書館(大津市瀬田南大萱町)の一室を六十人の聴衆が埋めた。「人を育ててほしい。図書館にはそういう役割がある」。愛知県田原市図書館の森下芳則元館長が熱弁を振るった。

 図書館の役割について森下元館長は、きめ細かなサービスを通じて、行政資料の紹介や読書習慣の定着促進が求められていることを指摘。運営を民間委託する指定管理者制度を導入した場合「職員が(運営ノウハウを身に付け)成長する時間を奪う」と警鐘を鳴らした。

 会を主催したのは、有志でつくる「図書館を考える大津市民の会」。昨年九月に市立図書館長名で、市図書館協議会に制度導入を議論するよう諮問があり、市議会で制度導入についての一般質問があったことに危機感を覚え、今年一月に結成した。

 会員の林知子さん(67)=同市木戸=は、制度を導入して職員の質が下がったとの指摘もある他都市の例を挙げ「図書館としての機能が失われた。大津では市直営で住民とつながった図書館づくりをして」と訴える。

 図書館協議会は三月、「制度は図書館の運営になじまない」とする答申書を提出。一方で、市が策定中の「民間委託推進ガイドライン」の案では、図書館業務は民間委託の検討対象としている。

 市行政改革推進課の担当者は「実際に委託するかは今後、検討する」と強調するが、林さんは「一部の図書館では春の人事異動で司書がいなくなった。民営化への流れができつつある」と警戒。今後も集会などで指定管理者制度の問題点を指摘していくという。

 市は他の事業でも民営化を模索する。市公設地方卸売市場のあり方検討委員会は十四日、「民営化を目指していくのが望ましい」と提言し、越直美市長が賛同。市民病院の地方独立行政法人化に向けた議論も進む。既にコンビニ店での証明書発行が始まり、七月には市役所の電話交換業務を民間委託する。

 市の狙いの一つには、昨年十月の市の試算で、本年度から五年間で計三百十八億九千万円の収支不足が見込まれた財政状況の改善がある。担当者は「少子高齢化で税収は減り(生活保護費など)扶助費は増える。状況は厳しい」と打ち明ける。

 市議選でも行財政改革を訴える候補者は少なくない。林さんは「駐車場運営など民間委託してもよい事業もあるが、住民と直接つながる業務では行政としてやるべきことをやってほしい」。財政再建と行政サービスの維持という、両立が難しい課題にどう向き合うのか。各候補者の訴えに注目が集まる。 

 (山内晴信)

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 十九日に告示した四市議選。各市が抱え、議員が向き合うべき課題にはどんなものがあるのか。各市の実情を随時、紹介する。