滋賀

原発問題、議論不発に長浜、終盤ルポ

2015年4月10日

 三日月大造知事就任後“オール与党態勢”の空気漂う県議会。大きな対立が見られない中、政党間で見解が異なる原発政策は数少ない争点の一つだ。しかし、若狭湾に立地する一部原発から30キロ圏内に市域がある長浜市選挙区で終盤の一日、各候補者の演説に耳を傾けたところ、目立つ発言は聴かれなかった。

 共産新人の杉本敏隆さん(62)は浅井支所前で演説。安倍政権の憲法改正への動きや安保法制を批判し、「戦争への暴走を絶対に許さない」「自民候補者への一票は、戦争への一票になる」と訴えた。

 演説中「消費税10%や原発再稼働などとんでもない」としたが、発言はそこまで。取材に、市北部では触れているとした上で「基本的には戦争反対が中心。平和を守ること、市民のために取り組む姿勢を柱に訴える」と優先順位を説明した。

 民主現職の大橋通伸さん(57)は、新栄町の公民館で農家支援策の必要性に言及した。中盤「原発再稼働や局所的豪雨など拭い切れない不安が多くある。人間が作った物に依存しすぎたから」。「三日月知事が言う新しい豊かさを考えたい」と続けたが詳細は触れなかった。

 市北部では現時点での再稼働は容認できない立場を示すが、「原発のことを言えば支援しないという声もある」。前面に出しづらい事情があるようだ。

 自民新人の北田康隆さん(62)は北ノ郷町の公民館で人口減少や「南高北低」と呼ばれる格差問題に触れ、地方創生の必要性を強調。「東京一極集中の構図が県にも当てはまる」とし、次世代が住み続けられるよう「県と市、国が連携する。皆さんの協力が必要」と訴えた。

 原発問題については演説では語らず、取材に「なくすべきだと思う」としたものの「党が稼働を認めているから取り上げていない」と答えた。

 自民現職の川島隆二さん(43)は集落単位の集会で地方創生による過疎対策を訴え。「若者が戻ってくるには郷土愛。この地域は酒も造っている。地方創生は地方のアイデアに国が応えるもの。住むことにわくわくするお手伝いをしたい」と力説した。

 原発政策に触れないことを指摘すると「地方選挙ならではの、地域ごとの過疎対策の方が住民にとっては切実な問題だから」と説明した。

 自民現職の野田藤雄さん(69)は西浅井町で、道路、農業、河川改修など具体的な課題を取り上げた。地域の道路事情についても個別に指摘。県職員と二期八年の実績をアピールし、「誰よりも県とのパイプは太い。これを生かして湖北のための事業をしたい」と力を込めた。

 原発問題には言及せず、取材に「地域密着で本当に実行できることを言っている」と争点にしない考えを示した。

 (山中正義、井本拓志、井上靖史、木造康博)