滋賀

<課題の現場から>(下)女性の活躍

2015年4月9日

パソコンで作業を進める北村さん(右)=大津市の滋賀銀行本店で

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 真剣な表情でパソコンに向かい作業をする姿は育児休業のブランクを感じさせない。滋賀銀行本店(大津市)市場金融部の北村美也子さん(37)は昨年四月、一年余りの育休から復帰。「周りの人に協力していただいている」と言うが、基本的には週五日、フルタイムでの勤務を続けている。

 自宅と職場、二歳三カ月になる長男の保育園は全て徒歩圏内。勤務の前後に送り迎えをし、帰宅後は家事、子育てにいそしむ。

 会社員の夫(39)や実母(65)も家事に協力的だが、最近は「時間の使い方が上手くなってきた」。効率よく作業を進められるようになり、以前は夫にやってもらっていた洗濯も自身でこなすようになった。

 休業前、一瞬だけ退職を考えた。それでも夫や母が協力を申し出たこともあって翻意。「ずっと家にいる自信はなかった。専業主婦のイメージもなかった」。現在は顧客への外貨や国債などの販売を仲介する部署に所属。二〇〇五年から同じ仕事を続けており、誇りとやりがいを感じていたのも大きかった。

 支える周囲の態勢は万全に近い。残業はほぼなく、半日のみ休業して家事、育児をする時間も確保できている。

 それでも不安がないわけではない。大津市内には病児保育に対応できる保育所は四カ所のみ。現在は自身が仕事を休んだり、母に長男の看病を頼んだりしているが、後ろめたさがないわけではない。「気軽に利用できる環境にしてほしい」と訴える。

 制度面では「男性の育児休業が取りやすくなるとありがたい」。県が昨年六月末の状況として県内事業所を対象にまとめた調査では、有資格者の女性で育休を取得した人は95・9%だったが、男性は1・9%。制度があっても利用実態が伴わない現状がある。北村さんは、夫がそばにいることで女性の子育てのストレスは軽減すると指摘し「一カ月だけでも男性が休みを取ってくれれば、母親としては気が楽」と打ち明ける。

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 育休中には「ママ友」と交流する機会もあったが、出産を機に退職する人が多いとの印象を持った。県の一昨年十月の調査では、結婚後に「仕事よりも家庭を優先したいと思う」と考える女性は53・8%。社会全体でみると、働く環境が整っていないこともあって、出産を退職のきっかけと考える人も少なくない。

 北村さんの元同僚は出産を機に退職したが、同銀行独自の再雇用制度を利用して再就職を検討している人もいる。「きめ細やかな女性ならではの視点を仕事に生かせる。働き続けることで社会の一員にもなれる」と女性が働く意義を強調した。

 (山内晴信)