石川

町議選で自粛動き“騒音”選挙カーやめんけ

2015年4月23日

選挙カーを使わない選挙戦。自転車で町内を回る新人候補(中)=21日、石川県川北町で

写真

「逆効果」現職ら申し合わせ

 二十一日告示された統一地方選後半戦。選挙に突入した石川県内の町議選で、従来型と違った街宣風景が見られる。川北町では、選挙戦の代名詞ともいえる選挙カーがない。穴水町も二十三日は現職候補が使用を自粛。内灘町では住民の要請で一部自粛する。各地の実情を追った。 (世古紘子、加藤健太、高橋淳)

 現職七人と新人四人が立候補した川北町議選(定数一〇)。二十年ぶりの選挙戦だが、選挙カーが一台も走らない「静かな選挙戦」だ。

 「一時間半くらいで全域を回れる。小さな町でうるさい選挙カーを出せば逆効果」。六十代現職は出さない理由をこう明かす。以前から現職の間で自粛の申し合わせがあり、今回も現職七人が協力する。

 別の現職の陣営幹部は「町議選は地区対抗の運動会のようなもの。どの地区から誰が出ているか有権者の多くは知っている」。公職選挙法では走行中の選挙カーでの演説などは原則禁止され、例外で名前の連呼が認められる。そのため、顔や名前が知られている現職は、「騒音」の不利益が大きいと判断するようだ。

 告示前、申し合わせが及ばない新人に現職も神経をとがらせたが、新人四人も「狭い町内で何台も走らせたくない」「費用がかさむ」と自粛を選んだ。

 ただ前回選挙戦になった一九九五年に比べ、若い世代の流入が続き人口は約一・四倍、有権者も約千二百人増えた。現職、新人とも新興住宅地にどう浸透するかが課題。新人の一人は自転車で回り街頭に立つ予定で、別の新人も拡声器を手に新興住宅地を歩いて回る計画だという。

 穴水町議選は新人三人を除く現職十人が二十三日、選挙カーを控える。前々回の取り決めが恒例化し、今回も事前に申し合わせた。八年前の前々回は能登半島地震直後で、被災者に配慮し全候補が選挙カーを自粛。前回も東日本大震災直後で、流れを踏襲した。

 今回も控える理由をある現職は「名前の連呼がうるさいという声も少なくない」と説明。ただ遊説期間は五日間しかなく、別の候補陣営は「一秒も無駄にしたくない。もったいない」と本音を漏らす。二十三日は多くの現職陣営が電話作戦に切り替える予定。現職十人は選挙カー使用時間を午前九時〜午後六時とすることも申し合わせている。

 一方、内灘町は告示前、町会区長会が候補予定者に住環境に配慮した活動を要請。育児中の家庭から苦情があり、幼児が昼寝する時間帯の配慮を求めた。同会幹部は「小さな町で何台もの選挙カーが街宣するのはいかがか」と話す。

 ある候補は「できるだけ協力する」と話すなど、候補たちはおおむね協力的。町民から「有権者の心証を悪くしては元も子もない」と共感の声がある一方、「現職が有利にならないか」と懸念する意見もある。