石川

激戦区ルポ(4)加賀市旧市町 票奪い合う

2015年4月10日

集まった支持者らに支援を求める候補者(左)=加賀市内で

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 十二年ぶりに選挙戦に突入した加賀市選挙区(定数三)は現職三人、新人三人が争う激戦だ。人口減少や開院まで一年を切った統合新病院の医師確保に加え、北陸新幹線開業の効果が及んでいない現状もあり、課題が山積する。ベテラン現職らは谷本正憲知事との親密さを強調し、若手候補らは宮元陸市長との連携を唱え、各候補が難局打破を訴える。旧加賀市と旧山中町の合併から十年を迎えても残る地域のしこりも形勢を見えにくくさせている。

 「谷本知事、県幹部クラスとも腹を割って話ができる」。八期目に挑む自民現職の向出勉さんは演説会で、目標の新幹線福井先行開業や地方創生など、県の裁量が大きい事業が続く見通しに触れ、市への予算配分を求めていくと力説する。票田の大聖寺や山代、山中地区を地盤とする候補もいるため、得票の目減りを警戒し、女性票獲得にも躍起だ。

 選挙区唯一の革新系候補となる五期の若林昭夫さんも「野党的立場だが、谷本知事や執行部と意思疎通を図れるのが強み」と街頭で訴える。地盤の山中地区で新人と争う構図に、陣営幹部は「失う票を旧加賀市からとるのは至難の業」と危惧する。革新系議席を守りたい連合石川の推薦や社民県連の支持を足掛かりに、精力的に企業なども回る。

 その山中地区がお膝元の新人田中哲也さんは、旧山中町長と合併後の副市長を務めた父実さんの地盤を継ぎ、保守層を中心に市全域で支持を得たい考え。宮元市長の地盤の片山津地区での演説で「市長の一番の側近議員として県政と市政をつなぐ」と強調するが、旧加賀市地区での浸透が課題。山中地区の候補共倒れを懸念する声もあり、危機感は強い。

 「県市連携で人口流出を食い止めないと。市議会で足を引っ張り合う時でない」。一期の現職室谷弘幸さんは演説会で、二〇一三年の市長選で保守分裂した影響で、市と議会が一枚岩で動けない現状の打開を訴える。市議出身だけに、陣営幹部は「市長が一番期待する候補」と強調。地元山代地区のほか、大聖寺地区などに後援会をつくり支持を固める。

 二十六歳の新人浅尾仁さんは一児の父で育児にも奮闘する横顔を紹介したリーフレットを配り、若者や女性票を狙う。浅尾さんと同じく大聖寺地区が地盤の大幸甚元市長の応援も得て、地元を中心に演説会を開く。街頭では「子育て世代として住み続けたい市にしたい。若い人にも少しでも選挙に関心を持ってほしい」と、投票率の底上げも意識する。

 同じ大聖寺地区から立候補した新人豊田晃快さんは組織に頼らず、協力する友人らと市内を巡り、地元を中心にスーパーなど人が集まる場所で演説を重ねる。動橋地区のスーパー前では「市民病院の跡地活用に取り組み、市内三温泉の衰退にも歯止めを掛けたい」と力説した。中高年層に響くよう、具体的に訴えることも心掛けているという。 (出口有紀)

加賀市(三…6)

 浅尾仁26 教育業  無新

 向出勉77 党県副会長 自現<7>

 室谷弘幸48 (元)市議  無現<1>

 若林昭夫75 団体役員 無現<5>

 田中哲也53 会社役員 無新 

 豊田晃快71 (元)議員秘書 無新

 (届け出順)