石川

【向き合う 統一地方選の争点】(4)地域内格差 新幹線効果 わが町に

2015年4月8日

新幹線で金沢へ来る観光客らを呼び込めるかが課題とされる山代温泉の古総湯前=石川県加賀市山代温泉で

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 四十一道府県議選が告示された三日午前。北陸新幹線に乗ってきた長野県の観光客約四十人が、新高岡駅(富山県高岡市)に降り立ち、駅から毎日出発している能登地方へのバスに乗り込んだ。目指す先は石川県輪島市だ。

 三月十四日の新幹線金沢開業から約半月。バス運営会社の担当者は「能登への観光客が順調に増えている」と喜ぶ。同社は開業後、貸し切りバスを二台増やしたが、今の受注ペースが続けばバスが足りず、大型連休分は予約を断らざるを得ない可能性があるという。

 能登半島の先端を三角形の頂点に見立てると、高岡は下辺の端に当たる。旅行会社もその地の利に目を付けて商品を企画する。

 高岡市の担当者は「大手旅行会社の能登への個人向け商品は、新高岡駅経由になっている」と説明。開業後、市内の観光地を訪れる人が三〜四割増えたのも、能登方面に向かう観光客が立ち寄る効果が大きいという。

 高岡市内の道の駅で飲食店を営む男性は「首都圏から和倉温泉(石川県七尾市)へ行くのに、新幹線の最速『かがやき』で金沢駅を使っても、『はくたか』で新高岡駅で降りても、時間はほぼ同じ。だったら安い方を選ぶのでは」と推察。能登半島と東海北陸自動車道を結ぶ能越自動車道七尾氷見道路が二月に全線開通した効果も実感している。

 高岡市にとって新高岡駅は「飛越能(飛騨・越中・能登)の玄関口」。岐阜県飛騨地方も含め、広域観光の拠点に位置付ける。実際に県境をまたいだ能登を味方につけたことで、新幹線効果も表れ始めている。

 高岡が能登に目を付けたように、石川県内でも南加賀地方は新幹線の終着となる金沢への観光客を引っ張ろうと躍起だ。

 「金沢から、ほんのひと足」。金沢市から約四十キロ。福井県境に近い山代温泉観光協会(石川県加賀市)のパンフレットはこううたう。「金沢止まりの観光客を呼び込むには、意外な近さをアピールするしかない」と担当者は話す。

 開業を機にメディアで北陸特集が増え、市内の山代、山中、片山津の各温泉の旅館予約数は増加傾向にある。ただ山代温泉で旅館を経営する万谷浩幸さん(39)は「金沢からあふれて流れてきているだけ。積極的に南加賀に来てもらう仕組みがない」と危ぶむ。

 県内でも開業効果は見え始めたが、持続させることができるか楽観できない状況だ。にもかかわらず、南加賀の自治体や観光団体の連携が弱いと感じることも少なくない。万谷さんは「温泉地がまとまりきれていない。能登や金沢に後れをとっている共通認識を持たないと」と投げ掛ける。 (佐久間光紀、出口有紀)