石川

県議選直前情勢7

2015年3月25日

市長選余波で乱立

加賀市選挙区(定数3)

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 二〇〇五年十月に旧加賀市と旧山中町が合併し十年を迎える節目の年の県議選加賀市選挙区(定数三)は、現職三人と新人三人が名乗りを上げた。二回連続の無投票から一転、地域対決も絡んだ大激戦が予想される。

 乱立の背景には、市が一六年四月開業に向けて整備中の統合新病院建設の是非が争点となった一三年十月の市長選の影響がある。

 「当選したら、宮元陸市長と腹を割って話し、市のために一緒にやる」。自民党現職の向出勉氏(77)=上河崎町=は一日の後援会事務所開きで力を込め、二〇年の東京五輪開催に向けた北陸新幹線の福井先行開業実現に期待し、県と市の連携を深める考えを示した。市内二十地区の後援会組織を中心に支持固めを図る。

 市長選をめぐって対立した宮元市長との関係改善を訴えた決意表明には危機感がにじむ。向出氏は統合新病院の計画推進を主張し落選した寺前秀一前市長を支持。一方、自民県議出身の宮元氏は再検討を主張。自民も分裂し市政の主導権を争う形になった。

 宮元氏は過去に秘書として仕えた森喜朗元首相の支援を得て、計画に反対した住民らの応援もあり勝利したが、保守系勢力の間にはしこりが残る。向出氏の陣営幹部は「宮元市長が誰を支援するかが鍵」と指摘する。

 宮元市長との連携を強調するのは無所属新人で会社社長の田中哲也氏(53)=山中温泉菅谷町。旧山中町長、合併後の副市長を務めた父実氏と地盤の山中地区などを回る。二月の後援会事務所開きには宮元市長も出席。田中氏は「市長選の影響が残る市政を正常な形に戻し、県政とのパイプ役を果たしたい」と訴えた。

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 田中氏を特に警戒するのは、同じ山中地区が地盤の無所属現職の若林昭夫氏(75)=河南町。旧加賀市でも上積みを狙うが、旧山中町と区別する住民意識は根強い。ただ、若林氏は唯一の革新系候補として連合石川の推薦を得て、労働組合を回り「県当局に通じた革新は貴重」と強調し、反自民や民主票の取り込みに躍起だ。

 無所属現職の室谷弘幸氏(47)=山代温泉=も焦りを隠せない。一四年三月の県議補選では、宮元氏を応援した大聖寺地区住民の支持も得て自民公認候補を破り初当選したが、田中氏の出現に危機感を抱く。地盤の山代地区を固め、大聖寺地区などにも後援会を設立。県政報告会などでは市政課題を示し「二十〜六十代の責任世代が考えないと」と説く。

 「誰を支持していいか分からない若者を動かす」。大聖寺地区出身で無所属新人の浅尾仁氏(26)=松が丘三=は若さを前面に。家庭教師をしながら、同地区を地盤とする大幸甚元市長が主宰するまちづくり研究会に参加。若い世代を意識し、レンタルビデオ店前で演説し、インターネットでも呼び掛ける。

 無所属新人の豊田晃快(てるよし)氏(71)=大聖寺南町=は組織に頼らず、地盤の大聖寺地区以外でもPRリーフレットを配布。自然再生エネルギーを開発する研究所(小松市)の代表で、一四年まで元参院議員の私設秘書も務めていた。「市の財政悪化に歯止めをかけ、市民病院の跡地の活用にも取り組みたい」と訴える。 (出口有紀)

 【立候補予定者】

 向出 勉(77) 自現(7)

 若林昭夫(75) 無現(5)

 室谷弘幸(47) 無現(1)

 豊田晃快(71) 無新

 田中哲也(53) 無新

 浅尾 仁(26) 無新

 ※氏名、年齢、自→自民党公認、無→無所属、現→現職、新→新人、丸数字は当選回数。現職は期数順、新人は年齢順、敬称略