石川

県議選直前情勢1

2015年3月17日

 統一地方選・前半の県議選は四月三日告示(同十二日投開票)まで二週間余りに迫った。住民の意向を県政に反映させる重要な役割を担う県議を選ぶ四年に一度の貴重な機会だが、現時点で無投票の可能性が高い選挙区も多い。一票を行使できるか否か。県内十五選挙区の情勢を紹介する。

鳳珠郡選挙区(定数1)

「一枚岩に」強い声

 能登町と穴水町の鳳珠郡選挙区(定数一)は前回、能登町笹川から出馬した新人山口彦衛氏が初当選。穴水町の元職が出馬を取りやめ、民主推薦の現職との一騎打ちを制した。今回は一転、住民から「地域の主導権争いをしている場合ではない」「奥能登のため一枚岩になるべきだ」などの声が多く、無投票の公算が大きい。

 能登町で注目されるのは、山口氏と持木一茂町長の関係。前回は持木町長が落選した現職を支持し、二〇一三年の町長選では山口氏が村長を務めた旧柳田村地区の町議が一時、立候補の構えを見せた。区長の一人は「本命は山口さん本人だった」と明かす。

 しかし、両者の対立はそれ以上深まらず、持木町長は無投票で再選。両者の足場が固まったその後は、目立った動きはない。別の町議は「山口氏の元村長らしい行政への対応、県と地元をつなぐ役割を評価する声は高まっている。最近は二人とも融和路線、大人の対応といった感じ」と評する。

 観光業関係者からは「内輪の争いによる悪い印象を、地域全体が警戒している」との声も上がる。

 前回、当時与党だった民主の推薦で落選した元職は政治活動から離れているといい、元陣営幹部は「民主対自民の構図はここ数年で薄くなった」ときっぱり。一二年に政権に返り咲いた自民の一強ぶりも影響していることを示唆し「目立つ人材もいない。奥能登の停滞を打破するため、現職に期待し一丸で送り出す雰囲気づくりが目立つ」と話す。

 穴水町では、元職の周辺で擁立を模索する動きもあったが進展せず、ほぼ無風。ある区長は「県に対する要望などを考えると、現職に任せた方が奥能登で一枚岩になりやすいのでは」とみる。

 町内で候補者が立たない背景には、過疎化による人材不足も挙げられるが、自営業の男性は「仮に擁立しても人口が倍の能登町に勝てない」と分析する。

 (志村拓、加藤健太)

 【立候補予定者】

  山口彦衛(69)自現(1)

 (氏名、年齢、自は自民党公認、現は現職、丸数字は当選回数、敬称略)

鹿島郡選挙区(定数1)

対立候補名前なく

 中能登町の鹿島郡選挙区(定数一)は県議長も経験した自民党現職の山田省悟氏(67)=久江=が出馬予定。現時点で他に動きはなく無投票とみられる。

 山田氏は今年一月に同町で開いた杉本栄蔵町長との新春互礼会で、観光振興や人口減少対策などを課題に挙げ「未来の子どもたちのために責任を果たしたい」と決意表明。杉本町長も、全面的な支持を呼び掛けた。

 山田、杉本両氏は、県議と町長の立場ですみ分け、友好関係を築いている。ともに一九九五年の県議選で初当選したが、三期目を目指した二〇〇三年県議選で杉本氏が落選。しかし二年後、中能登町合併後初の町長選で、杉本氏はライバルだった山田氏に推され無投票当選した。〇七年県議選は旧鳥屋町長の長屋一二氏が出馬し接戦だったが、その後は対抗勢力も影を潜めている。

 しかし、同町は昨年十二月の衆院選で、自民の北村茂男衆院議員と激戦の末に惜敗した近藤和也・民主党県連代表の地元。同町の得票は北村氏の倍で強固な支持基盤があり、政治的に中立の町議も「近藤さんが候補を立てれば支持する人は多いだろう」とみる。

 それでも近藤氏は「人材と勝機が見いだせれば候補を擁立したいが、今のところ具体的名前はない」と、擁立を否定。衆院選で近藤氏は同町で六千票余を得たが、山田氏の支持層と一部重なることもあり、県議選で支持者を困惑させる争いは避ける見通しだ。

 町民の一人は「若くて元気ある適任者がいれば面白くなるんだろうが。このままで良いと思っているわけではないが、諦めムードといったところ」とこぼす。 (荒木正親)

 【立候補予定者】

  山田省悟(67)自現(5)