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無投票次々、嘆く有権者地方議員「なり手不足」

2015年4月22日

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 二十一日告示された統一地方選の町村長・議員選は、市長選や市議選などと同様に無投票当選が相次いだ。前半戦と後半戦でいずれも無投票となった中部地方の自治体では、一票を託す機会がなかった有権者からは残念がる声も。無投票当選者の思いも複雑だ。地方選挙の低調ぶりは、当選者と有権者の双方に影を落とす。

 名古屋市に隣接し、三万一千人が暮らす愛知県大治町。町が含まれる前半戦の県議選(定数二、あま市・海部郡)に続き、町議選も一九八七年以来、二十八年ぶりの無投票になった。「特に町議選は私たちを代表する人を選ぶもの。その機会がなくなるのはやっぱり寂しい」と無職の近藤清治さん(75)は話す。無職中村元彦さん(53)も「選挙をやって町議の顔が分かる。知らない人が町議を続けるのは多少不安」とこぼした。

 町議選で唯一の新人候補だった若山照洋さん(45)は「周囲の方々が支援に動いてくれていたので、五日間戦い抜きたかったと思う半面、ホッとした部分もある」と複雑な思いを打ち明ける。最多の十選が決まった織田八茂(ひろしげ)さん(65)は「無投票は好ましくない。行政と議会が一体となっていくためには選ばれた人が議会に必要」と指摘し、「無投票だからこそ、いたずらに四年間を過ごしてはいけない」と自らに言い聞かせるように語った。

 岐阜県安八町でも県議選(定数一、安八郡)に続き、町長選で堀正さん(59)の再選が無投票で決まった。

 堀さんは支援者らを前に「責任の大きさは同じ。四年間の町政に対する判断と認識している」。支援者からも「町民が認めたということ。対抗馬を無理に立てるような無駄な選挙はしなくていい」との声が上がった。

 ただ、祝勝会に参加した町内の男性(76)は「町長が悪いとは思わんけど、選挙で刺激があった方がええよね」。町民が一票も投じないまま幕を閉じることに、「町の財政とかが不透明。選挙をやるとはっきりする」とやや不満げだ。

 市区町村議会の定数は減っているのに候補者が定数を超えないケースが相次ぐ現状は、地方議員の「なり手不足」の深刻さを浮き彫りにしている。

 総務省によると、全国の市区町村議会の総定数は二〇〇四年に五四七九九だったが、一四年には三一三九七と42・7%減少。特に町村議会は同じ期間で三三六四八から一一四六七(65・9%減)へと、およそ三分の一に減った。

 地方議会が議員定数を削減するのは、地方自治体の厳しい財政状況を踏まえてのことだ。市町村合併の際、議員定数を合併前の定数の合計より少なくする場合も多い。〇四年十二月に全国に二千九百二十七あった市町村は「平成の大合併」を経て一四年四月には千七百十八まで減少。併せて議員定数削減も進んだ。

 候補者数が同じなら定数減により無投票は減るはずだが、今回の統一地方選で市議選の無投票当選率は3・6%と過去最悪に。町村議選の無投票当選率も21・8%と〇三年に次ぐ高さとなった。