全国

無投票当選、市長・市議選も増国政「自民1強」が影

2015年4月20日

写真

 告示された市長選と市議選は、前半戦の道府県議選に続いて無投票当選が大幅に増加した。候補者不足に加え、国政で「自民一強」が続き、与野党対決の場面が少ない現状も影響しているとみられる。全国的に人口減少対策が急がれる中での無投票当選の増加は、住民の声を行政に反映させるという選挙の意義が疑われかねない危機的状況だ。

 「市民に訴えたいことがあったので、選挙期間が一日になったのは残念だ」。戦後初の無投票となった長崎市長選で三選を決めた現職の田上富久氏は、記者団に複雑な心境を打ち明けた。

 長崎では共産党が対抗馬の擁立を模索したが、前回選で大敗したこともあり、最終的に断念。田上氏は「住民が選ぶ場がなかったことは、好ましいことではない」としながらも「気にせずしっかりと仕事をしたい」と強調した。

 市長選、市議選ともに全体の候補者数は過去最少を更新した。自民、民主両党は津を含む十八市長選で同じ候補を推薦し、このうち五人が無投票で当選した。正式に推薦していない事実上の相乗りを含めれば、さらに増えるとみられる。

 ほかに無投票で当選したのは自民、公明の与党推薦候補が五人で、野党系の候補はゼロ。計二十七人のうち二十一人が現職で、新人も六人いた。

 県庁所在地以外でも、長崎県では長崎市に加えて人口が二番目に多い佐世保市も無投票で、県内の有権者のほぼ半数が投票機会を失った。

 北海道伊達市では現職が四回連続無投票で五回目の当選を決めた。新人が初当選した茨城県日立市は前市長、現市長と三代にわたり、四回連続の無投票となった。

 都道府県別で市長の無投票当選が最多だったのは、急速な人口減少に苦しむ北海道の八市。このうち夕張、三笠など四市は市議選も定数と同じ数しか立候補せず、無投票が確定した。

写真

 夕張市は全国唯一の財政再生団体だが、市長選や市議選を通じて市の将来を話し合う機会は訪れなかった。人口が三千人台に減り全国最少の市として知られる北海道歌志内市は、市議選(定数八)が前回に続いて無投票となった。

 佐々木信夫中央大教授(行政学)は、無投票当選が増えた背景について「(自民党が勝利した)昨年十二月の衆院選から時間がたっていないため、自民党系の勢力に対抗する候補がなかなか見つからず、見つかっても当選可能性が低いとみて戦いを避ける傾向があるのではないか」と分析した。