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減る投票所、遠くへ進む統廃合で人員難「不便に」

2015年3月30日

 四月の統一地方選で中部六県に設けられる投票所数は計六千二百四十四カ所で、「平成の大合併」直前の一九九九年と比べて一割少なくなる。市町村合併や人口減少で統廃合が進んだほか、投票を監視する立会人などの人繰りがつかず、投票所を残したくても残せないケースもある。

山あいに民家が点在する愛知県新城市愛郷の「島田地区」

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 二〇一〇年に投票所を三十六から二十五カ所に減らした愛知県蒲郡市。担当者は「周辺の市の状況も勘案し、県平均に近づくように見直した」と説明する。市によると、当時の県平均は投票所一カ所当たり住民数が二千九百人、面積が三・一七平方キロメートルだった。

 こうした基準に合わせれば、市街地から離れた地域が統廃合の対象になる。

 市最北部の坂本町では、地元集会所に設置されていた投票所が、二キロ以上離れた場所へ移された。地元で農業を営む鈴木正則さん(66)は「車を運転できなくなったらどうなるのだろう…」と不安を募らせる。

 同県新城市も〇五年の市町村合併を機に〇八年から投票所が半減。「投票所に来る有権者が三千八百人から数十人まで差があり、公平性の観点からも見直した」と市選管の担当者は妥当性を強調する。

 見直し時に投票所に登録された有権者が五十九人で最少だったのが、山あいにある同市愛郷島田地区。従来は地元の公会堂が投票所だったが、今は三キロほど離れた旧小学校舎まで足を運ばねばならない。住民の筒井ひろ子さん(90)は「学校も店もなくなるし、どんどん不便になる」と嘆く。

 背景には経費を削りたい行政側の意向もある。岐阜県下呂市は投票所を六十六から半数以下の二十七カ所に再編し、八百十八万円の経費を削減できた。

 〇六年に二町村が合併した三重県大台町は合併前の二十八から十四カ所に半減。県選管の担当者は「県南部を中心に人口減少が続いており、今後も投票所の漸減傾向は続くだろう」とみる。山がちな大台町では、町が一一年から投票日に送迎車の運行を始めた。統廃合で最寄りの投票所まで三キロ以上になった九投票区の有権者が対象で、公用車が三往復する。

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 一方で、前回統一選で十一あった投票所を今回八カ所に減らす長野県天龍村の選管担当者は「維持したかったが、やむを得ず廃止した」と苦しい胸の内を明かす。

 廃止する三カ所はどこも山深い集落。住民は十〜四十人ほどで、住民側から「(立会人などに)人を出すのが難しい」と告げられた。村選管は廃止した地域向けの期間限定の期日前投票所や、投票所への送迎バスなども検討する。

 統廃合が投票率の低下につながる懸念も。住民二十一人で高齢化率50%を超える滋賀県長浜市北部の余呉町摺墨(するすみ)。同じく立会人の人繰りができず、昨年の知事選から投票所が約二キロの隣集落に移った。住民の松永佶(ただし)さん(91)は「不便になった。出掛けたついでに期日前投票しているが、投票する人は減ったと思う」とこぼした。