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舞台裏にじむ人柄

2017年4月22日 紙面から

 二週間に及んだ市長選の運動も二十二日が最終日。現職の河村たかしさん(68)、前副市長の岩城正光(まさてる)さん(62)、元会社員の太田敏光さん(68)の三候補(届け出順)は街頭でこそ熱く訴えを展開してきたが、舞台裏をのぞくと、思わず笑ってしまうようなことも。三陣営の人間味あふれる風景をまとめた。

◆睡眠3時間「サイボーグか」 河村さん

 河村さんと言えば、風邪をめったにひかず、体の丈夫さが売り。選挙戦中盤の金曜深夜、地下鉄東山線栄駅から午前1時1分発の最終電車に乗り、帰宅した。

 東山線以外の地下鉄の終電延長を追加公約に掲げるため、本人が視察を発案した。演説をこなした後、栄の居酒屋で時間つぶし。車内に乗り込むと「結構、乗っているな」と満足げ。翌日も早朝から予定があり、睡眠は3時間ほど。だが、その日も元気に演説し、同行の市議の方が眠そう。「あの人はサイボーグか」と目を丸くしていた。

 河村さんは毎晩のようにツイッターに書き込み、名古屋めしを食べる様子などを写真付きで発信している。

 以前は事務所スタッフがほとんど代行していたが、告示後は「自力入力」と記し、スマートフォンを操作。だが、慣れない手つきで、押し間違いや変換ミス、文字数オーバーは絶えず、「やり直しだがや」と声を張り上げることも。飲んでいる最中が多く、「あかんことを書いたら政治生命が終わる。命懸けだ」とぼやきも飛び出す。一緒に飲む市議らは「入力する姿は普段の力強さとギャップがあり、かわいい」と温かく見守っている。

◆ついうっかり「チェンジ●●」 岩城さん

 「チェンジ河村、チャレンジ岩城、チャンス名古屋!」。岩城さんの街頭演説の締めくくりによく登場するフレーズだ。分かりやすく、覚えやすいため、街頭で配るチラシにも書き込まれている。

 ある日の街頭演説。終わりに近づき、いつものフレーズと思いきや、ついうっかり「チェンジ岩城!」と絶叫した岩城さん。近くでビラを配っていた運動員も、一瞬「あれっ?」と手を止めた。慌てて言い直したが、ある関係者は「岩城さん、チェンジする相手が違います」と苦笑いしていた。

 炎天下の祭り会場。この日の気温は25度を超え、会場で岩城さんを関係者に紹介する議員たちも、岩城さんもみんな汗だくだ。人にもみくちゃにされながら、丁寧に握手を交わす岩城さん。そんな中、ふと気付くと、姿が見えなくなった。

 ステージでは、バンドが「ブルーライトヨコハマ」を演奏中。振り返ると、ステージ前でノリノリで体を揺らす岩城さん。「候補、こっちです」とスタッフがたすきを引っ張った。「俺の世代の歌なんだよ。懐かしい」と岩城さん。同行した議員は「歌は選挙が終わってからですよ」と突っ込んだ。

◆ニセ電話詐欺被害者に? 太田さん

 支援組織がなく、たった1人で戦う太田さんは、立候補の手続きから試練に見舞われた。法務局に預ける供託金240万円を銀行で引きだそうとした時。「ニセ電話詐欺では」と不審に思った行員が“機転”を利かせて別室に案内。警察官に事情を聴かれる事態に発展した。納得してもらったが「高齢だから、被害者と思われちゃった」と苦笑い。

 街頭演説中は「自分は反現職。頑張って」と言う市民に握手を求められることも。「本当に私に投票してくれるか分からないよ」と斜に構えながらも、頬を緩ませていた。

 (市長選取材班)

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