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2017年4月21日 紙面から
三期目を目指す河村たかしさん(68)と前副市長で弁護士の岩城正光(まさてる)さん(62)が事実上の一騎打ちを演じる名古屋市長選は、これまでのような「改革市長VS既成政党」のガチンコ対決色が薄まっている。市民代表として挑むという岩城さん陣営の戦略に加え、各政党も河村さんとの全面戦争を避けたいのが本音。一方、河村さんは選挙戦を通し、小池百合子東京都知事との連携など、新たな改革勢力結集の弾みにしたい思惑があったが、描いた通りにはいっていない。
「どうか皆さんのお力で引き上げてください」
十九日夜、名東区役所講堂に自民、民進、共産の市議や支援者ら約五百人が結集した。終盤戦に向けた岩城さんの訴えに、マイクを握った市議たちが「金持ち減税をやめさせよう」「名古屋城の木造復元をなぜ急ぐのか」と声を上げた。
ただ、こうした盛り上がりと裏腹に、今回、反河村候補への支援態勢は、自民と民進(旧民主)が総力戦で挑んだ二〇一三年の市長選と打って変わる。主要政党の党本部や県連は推薦などを見送り、自民、民進、公明、共産の各市議らが個別に支援。麻生太郎副総理(当時)や石破茂・自民幹事長(同)ら国政選挙並みの応援陣容だった当時と異なり、大物の応援はない。選挙戦後半、閣僚経験者を招いてテコ入れする動きもあったが、立ち消えた。
全面対決を避けるのは、河村さんの政党批判の舌鋒(ぜっぽう)を封じたい思惑がある。岩城さん支援の市議には選挙カーや演説会の同伴が割り当てられているが、中堅市議は「電話や推薦はがきのノルマはあるが、それ以上の活動は…」と歯切れが悪い。そうした事情を知ってか知らずか、河村さんの今回の公約は、市議報酬に関し、これまでの「年八百万円恒久化」から「年八百万円を軸に」と軟化。街頭で「報酬半減」を声高に訴える場面も少ない。
さらに各党が気に掛けるのが、小池知事の地域政党の動向が注目される七月の東京都議選への影響だ。自民のベテラン市議は「小池さんと河村さんの関係はよく分からないが、党本部や県連は『ここはおとなしく』という考え」と漏らす。
一方、河村さんは昨年夏の参院選で日本維新の会(旧おおさか維新の会)と共闘。同十二月に東京に出向き、小池知事の政治塾で講師を務めるなど、新たな勢力結集に熱心だ。今回の公約集も「庶民ファーストナゴヤ」と命名。市長選であらためて選挙モンスターぶりを見せつけ、都議選を控える小池知事にラブコールを送りたい思惑がある。
だが小池知事からは九日の告示日に祝電が届いただけで、名古屋入りの予定はない。終盤、小池知事と近いとされる衆院議員の応援を要請しているが、実現は流動的。陣営幹部は「市長選は河村さんを改革勢力のキーマンとして全国に売り込む好機。誰も来ない事態は避けないといけないが、時間が…」と気をもむ。
(市長選取材班)