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2017年4月21日 紙面から
「あと七十二時間だ、行ってきます」
二十日朝の地下鉄原駅前(天白区)。日焼けした顔を両手でこすって気合を入れ、選挙カーを見送る支援者に笑ってみせた。向かった牧野ケ池緑地(名東区)。一時間ほどかけて、グラウンドゴルフ大会に参加していたお年寄り約二百人と握手。「来てくれるの待っとったよ」「もう一歩だよ」。激励の言葉に「頑張るからね」と誓う。少しずつ、手応えは確かになっている。
市民団体と一緒に立ち上がった選挙戦。「市民目線で」との思いから、駅前での朝の演説は欠かさない。選挙運動開始の午前八時と同時にマイクのスイッチを入れ、「新しい名古屋をつくりましょう」と一貫して訴える。
「あれ誰?」。当初はそう言われることもあったが、「知名度がないから仕方ない。チャレンジャーだから」とすぐに気持ちを切り替えた。最近は「ホームページで日程を調べました」と駆け付ける大学生や、写真撮影を求める人が目に見えて増えてきた。
「河村市政の八年間の総括が問われる選挙です」が決まり文句。現職に請われて副市長を三年務め、そこで感じた行政の仕事のやりがいと、「このままの市政ではいけない」という使命感。地域委員会やSL定期運行、広小路屋台構想など、実現しなかった数々の「税金無駄遣い」の施策。そして、市民税の一律5%減税は、高所得者に恩恵が偏っていると憤る。
演説会で「本当に市民のためになっていますか」と問い掛けると、「なってない」と返ってくる。「体温が伝わるぐらいの近い関係じゃないと、思いは伝わらないからね」。市民の生の反応に、背中を押されている。
支えてくれる仲間の力は大きい。政党や組織に関係なく、さまざまな市民団体や有志が集う。街頭活動を手伝ってくれる顔ぶれは日々、違う。南区の会社員斎籐麻由子さん(35)は、長女(6つ)を小学校に送り出す前のわずかな時間に、岩城さんの駅前の演説に駆け付け、支援を呼び掛けた。「子どもの未来を考えてくれる。絶対に市長になってほしいから」
選挙活動を終えて事務所に戻ると、足を運んだ人が書き残してくれたメッセージが、日に日にボードを埋めていく。「皆が住みやすい街に」「子どもの未来が輝く名古屋に」−。その願いに応えるよう、自身に強く言い聞かせる。「一人一人を大切にする市政をつくっていくから」。思いを遂げるため、最後の瞬間まで全力で戦い抜く。